遺失物は増加傾向、拾得件数はさらに上回る
警視庁から年に一度公表される前年の「遺失物取扱状況」が今年も3月に発表されました。
2024年の遺失届の受理状況と拾得届の受理状況をみると、遺失件数は108.6万件で前年比+6.1%でした。一方、拾得件数は440.4万件で前年比+7.8%。そのうち遺失物の物品点数は233.5万点で前年比+2.6%、拾得物の物品点数は475.6万点で前年比+7.0%です。遺失件数の4倍の拾得件数があり、遺失物の物品点数の2倍の拾得物の物品点数があったわけで、落ちていたものを交番などに届けてくれる親切な人が多いことがわかる数字です。
「主な物品の受理点数」をみると、拾得点数の内訳の多い順に、
1.証明書類
2.有価証券類
3.衣類履物類
4.かさ類
5.電気製品類
6.財布類
7.かばん類
8.携帯電話類
9.貴金属類
10.カメラ眼鏡類
となっています。このうち、遺失点数が拾得点数を上回っている品目、つまり紛失すると戻ってきにくいと思われる品目は、証明書類、財布類、携帯電話類の3項目になります。
遺失届件数と拾得届件数はともに、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年と2021年に大きく落ち込みました。そこから持ち直し、2024年にはどちらもコロナ前の水準を上回っています。
「現金」の落とし物
2024年の遺失届現金は83.8億円で前年比+4.1%増加しました。2021年60.3億円が直近のボトムで、そこから3年連続での増加。経済活動の正常化を反映していると考えられます。ただし、コロナ禍前の2018年84.1億円と2019年84.4億円には届いていません。キャシュレス化が進んできている影響が大きいのではないでしょうか。
2024年の拾得届現金は44.9億円で前年比+1.8%増加しました。2020年33.1億円が直近のボトムで、そこから4年連続で増加してきました。こちらは、コロナ禍前の2019年38.8億円を、40.0億円になった2022年で早くも上回りました。
「落とした現金の半分以上は戻る」は今後も続く?
21世紀になってからの24年間の遺失届現金に対する拾得届現金の比率は、2012年までは30%台でしたが、アベノミクス景気という長期間の景気拡張局面があったこともあり、2012年35.4%をボトムに2013年から2022年の57.5%まで10年連続で改善しました。その後、2023年54.5%、2024年53.6%と2年連続で低下するという、限界的にみると気がかりな動きもみられますが、「東京で現金を落としても、半分超戻ってくる」という明るいデータが2020年以降5年連続で続いています。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
預金中心の人必見!資産の目減りに気づいていますか?
“新NISA”を活用したインフレ時代の「資産保全」
>>4/3(木)LIVE配信<<