消費者心理に暗雲。物価高見通しにより暮らし向き判断が悪化…内閣府調査で明らかに【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

景気の予告信号灯としての身近なデータ(2025年2月25日)

消費者心理に暗雲。物価高見通しにより暮らし向き判断が悪化…内閣府調査で明らかに【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
(※画像はイメージです/PIXTA)

内閣府の「消費者マインドアンケート調査」によると、物価上昇の見通しが強まるにつれて、消費者の暮らし向き判断が悪化する傾向が顕著になっています。特に直近では、物価見通しが過去最高水準に近づくなかで、暮らし向き判断が低迷しており、消費者の間で生活への不安感が広がっていることが示唆されています。本稿では景気の予告信号灯として、「2月消費者マインドアンケート調査」を取り上げます。エコノミスト・宅森昭吉氏の解説をみていきましょう。

物価高の見通しが強まるほど、暮らし向き判断DIの足枷に

内閣府「消費者マインドアンケート調査」は、消費者の「暮らし向き」や「物価の見通し」について、「だれでも」「自由に」回答できるアンケート調査。

 

内閣府「消費者マインドアンケート調査」は16年9月から実施されている調査(試行)で、スマホなどから回答できる誰でも自ら参加できるユニークな調査です。毎月20日締め切りで、結果の公表時期が当該月の22日~25日ごろと早く、消費者マインドの基調変化を的確に把握できます。

 

質問は「暮らし向き(半年後)」と「物価上昇(1年後)」の2問です。たとえば「暮らし向き」の質問は、「良くなる」「やや良くなる」「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」の5つの選択肢から回答します。景気ウォッチャー調査と同じ5段階での評価なので、同調査と同様に、0.25刻みで1.0から0.0までの点数を割り振り加重平均して、暮らし向き判断DIと物価見通し判断DIを簡単に算出することができます。全員が「変わらない」と答えると景気判断の分岐点の50になります。

 

暮らし向き判断DIと物価上昇判断DIの相関係数は、16年9月から21年8月までの最初の5年間は0.01と無相関でした。しかし、21年9月から25年2月までの最近の3年5ヵ月間はマイナス0.70と逆相関になっています。現状は、高い物価見通しが暮らし向き判断の足枷になっている状況です。

 

(出所)内閣府
[図表1]消費者マインドアンケート調査(最近3年5ヵ月間) (出所)内閣府

直近5ヵ月連続して、暮らし向き判断DIが30台の低水準に…

暮らし向き判断DI、24年10月から25年2月の5ヵ月間は、物価見通し判断DIが84以上の高水準に上昇したことから、低水準の30台に。

 

暮らし向き判断DIの16年9月から25年2月の全調査期間平均は36.8、最高は17年1月48.9、最低はコロナ禍の20年4月20.7です。最近の暮らし向き判断DIは、24年10月から25年2月の5ヵ月間は、物価見通し判断DIが84以上の高水準に上昇したことから、低水準の30台になりました。24年9月の41.0を直近の極大点として、振幅を伴いつつももたついた動きになっています。25年2月は35.8で1月の33.9からやや持ち直しましたが、依然弱めの水準で推移しています。

 

(出所)内閣府「消費者マインドアンケート調査」
[図表2]暮らし向き判断DI (出所)内閣府「消費者マインドアンケート調査」

 

(出所)内閣府
[図表3]消費者マインドアンケート調査(試行):暮らし向き(半年後)の集計結果推移 (出所)内閣府

25年2月の物価見通しは統計史上3番目の高水準に…

25年2月の物価上昇判断DIは、コメや生鮮野菜などの身近な物価の上昇もあり、90.2と統計史上3番目の高水準まで上昇。

 

物価上昇判断DIは、16年9月から25年2月の全調査期間平均は77.0、最高は23年6月90.7、最低は21年2月60.0です。調査開始から22年1月までは60台・70台で安定推移していましたが、ロシアがウクライナ侵攻した月の22年2月調査以降物価上昇判断DIは80台・90台で、物価が上昇するという見通しが強まりました。

 

(出所)内閣府「消費者マインドアンケート調査」
[図表4]物価見通し判断DI (出所)内閣府「消費者マインドアンケート調査」

 

22年10月に90.4をつけたあと、80台後半の高水準での推移が続き、23年は6月に90.7をつけました。そこから振幅をともないつつ24年9月の80.3まで一旦低下しましたが、反転上昇傾向になり、25年2月に90.2と20ヵ月ぶりの90台を記録しました。

 

(出所)内閣府
[図表5]消費者マインドアンケート調査(試行):物価見通し(1年後)の集計結果推移 (出所)内閣府

 

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

 

 

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

 

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