(写真はイメージです/PIXTA)

FRBは過去2年間で急速な利上げを行い、米国経済は大きな変化を迎えました。現在はインフレの鎮静化を受けて利下げに舵を切っていますが、市場の動向や銀行収益への影響はどうなるのでしょうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所の小林正宏氏が、FRBの政策変更が金融システム全体に与える影響について詳しく解説します。

利上げと国債評価損の行方

日本においても、金融政策を正常化する過程では同じことが起きることは想像に難くない。2025年1月末時点で日銀の当座預金残高は528兆円余となっており、0.5%の付利を11年間続ければ2.6兆円余の損失となる※6が、それは民間銀行の懐に入るだけの話であり、国庫納付金は減るかもしれないが、一国経済としてはやはり変わらないということになる。

 

また、金利上昇局面で保有する固定利付国債等の評価損が膨らむのは米地銀に限った話ではなく、中央銀行も同じであり、そのことにより通貨の信認が揺らぐといった議論も見受けられる※7。しかし評価損の観点で見ると、FRBの評価損は100兆円規模であり、日銀とは一桁異なる規模となっている(図表6)。

 

FRBをもとにニッセイ基礎研究所が加工作成
[図表6]日銀とFRBの国債等の評価損益 出所:日銀「会計・決算」出所:日銀「会計・決算」FRBをもとにニッセイ基礎研究所が加工作成

 

そもそも、日銀もFRBも保有国債の評価方法として償却原価法を採用しており、利上げにより評価額が下落しても財務に影響はない。財務に影響するのは準備預金への付利により逆ざやとなり期間損益に影響が出る場合のみであるが、既にFRBが巨額の赤字を計上している中でも米ドルの信認は揺らいでいない。

 

むしろ、金利差を背景に米ドルの一人勝ちといった状況すら生じている。それは米ドルが基軸通貨であるからであって、日本円の場合は違う可能性があるということを否定することはできないかもしれない。しかし今のところ市場はそう見ていない。

 

いずれにしても、財務の状況にかかわらず、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」という理念を誠実に実行していると認識されることで通貨の信認も得られることを期待したい。

 

※1 利上げしても長期金利が上昇しないことをグリーンスパン議長(当時)は「Conundrum(謎)」と呼んだ。次のFRB議長になったバーナンキ氏は「世界的な貯蓄過剰(Global Saving Glut)」が原因で、経常黒字国が米国債を購入するので短期金利を引き上げても長期金利が上昇しないと分析した。
※2 住宅ローン担保証券(Mortgage Backed Securities)。FRBは現在も2.2兆ドル余のMBSを保有している。
※3 FRBの場合はリバース・レポ(Overnight Reverse Repurchase Agreement Facility)も大規模に運用された。
※4 「FRBは巨額の債務超過もドルの信認は揺るがず~日銀の出口戦略への参考となるか~」(ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2023年8月21日)
※5 会計処理上は差額が繰延資産として計上されるので形式的には債務超過ではない。
※6 一定の前提条件に基づく試算を公表(「日本銀行の財務と先行きの試算」(日銀レビュー24-J-15、2024年12月26日)
※7 NHKニュース『日銀 国債の評価損13兆円余りに拡大 利上げの影響で過去最大に』(2024年11月27日)

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年2月26日に公開したレポートを転載したものです。

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