サプライズを避けたい
メルカリ総合研究所が2023年3月に18歳~57歳の男女600人を対象に実施した「Z世代の行動特性や価値観とクレジットカード利用に関する調査」※9によると、想定外のことが起きた時、Z世代では30.0%が、バブル世代では21.3%が「失敗」と捉えると回答しており、Z世代はバブル世代に比べ、「想定外」を失敗やストレスと捉る傾向があるようだ。
実際に同調査ではZ世代の6割以上が「想定外のこと/サプライズなことはできるだけ避けたい」と回答したという。同様にSEEDATAが2021年に19~25才の男女224名を対象に行った「ネタバレに関する調査」※10では友人や家族にプレゼントをあげる際に中身をネタバレしてからあげたことがあるか聞いているが、64.0%が経験があると回答している。
従来の価値観で言えば誕生日や記念日などはサプライズが前提であるが、祝われる側からすると、サプライズで連れていかれた場所によっては、自身の服装やメイクがミスマッチなケースもあり、自身が満足しない装いで写真などを撮られSNSにアップされてしまったりすると、いくら素敵なプランだったとしても、祝われる側にしてみればネガティブな感想が生まれる原因になってしまいかねない。
そもそも、サプライズは、成功すれば相手の期待値以上のものになるが、当然がっかりさせられる可能性もある。期待値以上をハイリスク・ハイリターンで狙いに行くより、相手が確実に喜ばせることに重きを置くのがZ世代的と言えるだろう。
また、プレゼントをもらう側も、もらったプレゼントによい反応ができないかもしれないというリスクや、そもそもいらないモノを貰っても困るという事から、「ウィッシュリスト」と呼ばれる、誰かがくれる(購入してくれる)ことを期待して作ったリストを公開し、もらう側もハズレのないモノを期待する場合もある※11。
ちなみに、SNS用の写真を撮ることが大きな目的となっていることから、東京ディズニーリゾートにサプライズで連れていくことは、すでにご法度とされている。
※10 牧島夢加「Z世代に流行する「ネタバレ消費」とは?“失敗したくない”若者のホンネ」LIFE INSIDER 2021/06/16(https://www.businessinsider.jp/article/236701/)
※11 あげる側もセンスが悪いと思われたくないし、もらう側もそれを貰っても困る。そのような不確定な要素によって生まれるミスコミュニケーションこそが、消費の失敗となるため、そのリスクを避けていると言えるだろう。
リスク回避のためのネタバレ消費
3つ目はコンテンツ消費におけるネタバレだ。冒頭で前述した通り、SHIBUYA109lab.の調査によればZ世代の約半数がネタバレをしてからのコンテンツ視聴経験があると回答している。
同様にSEEDATAの調査においても映画やドラマを視聴する際に事前に、ネタバレサイトや口コミサイト、考察サイトなど内容を確認してからの視聴経験があるか、という問いに対して54.1%が経験があると回答している。
メルカリ総合研究所の調査からも示唆されているように、Z世代は先の分からないことや想定外のことが起きて気持ちがアップダウンすることは、ある種の「ストレス」と捉える傾向が強い。日々消費しなくてはいけないコンテンツは極めて多く、その都度感情が揺さぶられること自体がストレスになるため、事前に物語の結末や道筋を知っておきたいのだ。
ネタバレを肯定し視聴を楽しむ層にとっては、自身の持つ事前情報やそれに基づいて立てた予測と実際に視聴しているモノとを重ね合わせて答え合わせをするような視聴体験をしていると言えるだろう。
体験しないとわからない事に対して費用を払う事が映画やレジャーを始めとした「コト消費」の本質であるのだが、体験しないとわからないという点が、わからない事に対して支出するリスクや、予期していない感情になることへのリスクとなってしまっているのだ。