(写真はイメージです/PIXTA)

タイムパフォーマンスという考え方は、私たちの消費行動を大きく変化させました。セイコー時間白書2024の調査では、71.5%の人が「無駄な時間を過ごしたくない」と回答。私たちはなぜここまで効率を求めるのでしょうか。 本稿では、ニッセイ基礎研究所の廣瀬涼氏が、タイパ消費の実態と、その背景について詳しく解説します。

慎重な情報収集とマイベストバイ

関西学院大学・鈴木謙介ゼミナールが、株式会社シタシオンジャパンとの共同で行った「Z世代のコスパ感覚」に関する調査※5によると、コスメショップにおける来店客の滞在時間は平均12分、その内、テスター試用やパッケージを見るなど商品を立ち止まって手に取る時間は平均2分であったという。

 

また、来店客はテスターの蓋をすべて開ける、比較のためにブースを3往復する、商品を決めてもまだテスターを試し続けるといった様子も観察され、店頭ではしっかりと商品をテストして確認する行動が見られた。これは、過去の筆者のレポート※6でも論じている通り、Z世代の消費行動の特徴の1つとしてみられる「買い物に失敗したくない」という動機が情報収集を慎重にさせていると考えられる。

 

実際に商品に遭遇してから、購買に至るまでは、SNSやYouTubeなどの口コミや、インフルエンサーのレビューを参照する等、多くの情報源から慎重に商品を選ぶ傾向にある一方で、実際に店頭で商品を検討する際には、しっかりとテストをしたり、友達や家族と来店し意見を仰いだり、調べつくして何度も見たはずの口コミページを再度閲覧する等、最終的な購入までに時間や手間のかかる行動をとる傾向がある。

 

また、ECサイトやメルカリなどで新品が低価格で出品されていないかなど価格を比較し、店頭で実物を見ながらインターネットを経由して購入するといった消費行動も珍しくはない。

 

電通プロモーションプラス若者消費ラボの所長を務める五十嵐響介が、SNSネイティブであるZ世代は情報精査に費やす時間が短く、SNSではコンマ数秒で自分に必要な情報か否かを判断しているという見解※7を示しているが、そのような日々流れてくる膨大な情報を瞬時に処理している一方で、消費に失敗しないために時間や手間をかける「脱タイパ」的な傾向が見られると言えるだろう。

買い物の失敗を避けたい

イー・クオーレが行った「2022年Z世代の消費行動に関する調査」※8では、Z世代と、それ以前のY世代の買い物する時の価値観を比較しているが、「失敗したくないという気持ちが強い」「決断する時は他人のアドバイスがほしい」などの失敗しない買い物を意識した項目への回答がY世代より多いことがわかっている。

 

また、Y世代は、商品の売上ランキングなど、ある意味大衆からの支持や大衆が考える正解を購買動機や参考にしていたが、Z世代は口コミの評価の高さや、情報ソースの信ぴょう性、自分にあっているかという、自分にとってのマイベストバイを求めている。筆者が以前大学生を対象に行ったグループディスカッションでも、

 

確かに商品に対する知識量は販売員や美容部員を信用するけれども、自分に似合うものは自分の方が知っているから、検討中に話しかけられるのは困る。

 

という意見を多く耳にした。同様に成人式や卒業式など着付けが必要な際にヘアメイクや着付けはお店に頼むが、メイクに関しては自分でした方がいい、という意見がSNSで散見されたりする。人が薦めてくれたモノや、人気があるモノという「推奨」だけを購入の決定打にせず、自分にとっての正解に繋がる情報を取得するために手間を惜しまないのである。

 

※5 関西学院大学・鈴木謙介ゼミナール「「Z 世代のコスパ感覚」に関する調査」2024/08/30(https://seminar.szk.cc/genz_research_20240830.pdf
※6 廣瀨涼「Z世代の消費を読み解く5つのキーワード」基礎研レポート 2023/04/17(https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=74574?site=nli
※7 五十嵐響介「Z世代は0.5秒で判断する 買う選択肢に残るためのSNSの作法」2023年9月号販促会議(https://mag.sendenkaigi.com/hansoku/202309/sns-buying-intention/027111.php
※8 伊藤真美[「Z世代の消費行動の特徴は? コンテンツ作りで意識すべき特有の”価値観”」web担2022/11/02(https://webtan.impress.co.jp/e/2022/11/02/43482

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年2月17日に公開したレポートを転載したものです。

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