中小一社の廃業が、業界の部品供給システムを崩す!?
経営者が従業員の次に気にするのが取引先ですが、M&Aなら影響は最小限に留めることができます。
製造業に携わる人であれば周知の事実ですが、製造業ではある一つのメーカーが原材料から完成品までをつくるということではありません。大きく分けると、原材料を製造するメーカー、その原材料を利用して部品をつくるメーカーがあり、さらにその部品を集めて半製品をつくるメーカーがあって、最終的に完成品をつくるメーカーがあるといった流れになります。元を辿れば辿るほど、かかわるメーカーが増えていくことからピラミッド構造に例えられます。
例えば自動車産業を例にとると、一台の自動車は何万点もの部品からつくられています。そして車種などによって、製造ピラミッドが異なり、また半製品ごとにもピラミッドが構成されて、一次下請け、二次下請け、三次下請けと複数の階層を構成して、多数の中小製造業が存在しています。
つまり、この製造ピラミッドを構成している中小製造業が一つ廃業するだけで、部品供給のシステムが危うくなってしまうことがあるのです。特に多大な影響を被るのは直接取引のあった前後の工程を担う企業です。
廃業した中小企業の技術が特殊であれば・・・
こういった場合の対策としては、その前後の工程を担う企業が代替メーカーを確保しておくことです。うまく見つかればそれで成り立ちますが、廃業した中小製造業の技術が特殊なものであると見つかりにくい、また見つかっても採算が取れない取引になってしまう、ということも生じます。
2016年1月に報道された、ある自動車関連メーカーの工場内での事故が発端で自動車の生産ラインが数日間停止したというニュースは記憶にも新しいと思います。中小製造業の場合、そこまでの影響力はないにしても、ある程度の生産システムへの影響は考えられます。そのため、それ相応の対応策が不可欠になります。
このように1つの中小製造業の廃業で生産システム全体の変更を余儀なくされ、製品の生産体制全体をも揺るがしかねないことになってしまうのです。となれば、M&Aで第三者に会社を託し、関連する取引先や、生産ライン、従業員を守ることを考えた方がより建設的で、今後の製造業のためになることは間違いありません。
【図表1 中小製造業における系列取引率】
【図表2 日本の自動車産業の下請け構造例】
【図表3 製造業の業界構造イメージ】