いそうでいない「優秀なM&Aのアドバイザー」!?
前回の続きです。譲渡価格での妥協が必要とはいっても、純資産を大きく下回る価格での売却となると、適正価格とは言いにくいのも事実です。各種条件と照らし合わせて、譲渡価格の落としどころを探るのは専門家であるアドバイザーの役目ですから、その能力を有したアドバイザーを選ぶことも必要になってきます。
高い価値での売却を実現するためには、大前提として優秀なアドバイザーの存在は欠かせません。M&Aを相談しようと思った時、真っ先に思いつく外部の相談相手と言えば顧問税理士でしょう。その次が顧問弁護士や公認会計士などです。初めの一歩としては間違っていませんが、その後M&Aを本格的に進めるとなった時には心配なことがあります。
M&Aの知識は彼らにとって業務上必須の知識ではありませんから、単純にわからなかったり表面的な内容しか説明できなかったりということがあっても不思議ではないということです。相談してもそういう方法もあるみたいですね、とか、「今度調べておきます」といった具合ではぐらかされて終わってしまっている場合には、そういった事情が考えられます。
また、銀行などの金融機関で相談した人もいるかもしれません。しかし銀行もM&Aのネットワークを持っているところと持っていないところがありますし、担当の銀行員によっては詳しい知識や情報がないこともあり、「本部に情報をあげておきます」の一言で片付けられてしまって音沙汰なしということがあるようです。
また、少し知識がある場合には株価算定だけはするかもしれませんが、そこから先には中々進みません。何か月後、何年か後に気になって問い合わせをしてみると担当の銀行員はすでに異動していて、また株価算定からやり直しといったことも出てくるのです。
そうすると、やはりM&Aコンサルタントに相談すべきだということになるのですが、それでも落とし穴があります。専門家ですからM&Aの知識、実績ともに申し分ないこと
が多いはずですが、様々な業界があるため、製造業に詳しいかどうか、製造業の知識や実績があるかどうかは未知数です。
製造業には疎い人が担当につけば、高い価値で売却できる可能性は一気に狭まってしまいます。では、一体どういったアドバイザーなら適していると言えるのでしょうか。
知識や実績に加え、業界に精通していることも重要
製造業の場合、M&Aについての知識や実績があるということは前提条件として、業界に精通しており、技術が判断できて、ネットワークを持っているアドバイザーが必要です。まず、売り手側が備えている技術がどのようなレベルのものなのか、どのような価値があるのかということが判断できなければ、適切な企業評価はできません。
例えば、一口にプレス加工会社と言ってもそれぞれに違いがあります。所有設備により、大型部品に対応した工程あるいは小型部品に対応した工程、多品種少量生産もしくは量産化に対応した工程、特殊形状の加工技術、扱う材料の違い等々様々な要素から、その会社の技術力や特徴を明確に判断しなければなりません。
こういった技術の高さや希少性の判断によって強みや売りを模索して、譲渡価格のバランスを取ることができるのです。
また、業界内でのネットワークも必要です。強みや売りを理解して正しい評価をしても、適切な相手と結び付けられなければ意味がありません。ニーズのある方向を理解していなかったり、声をかける製造業の相手がいなかったりすれば、うまくマッチングへと辿りつけません。
業界内にネットワークがあれば、多くのM&Aのケースについての情報が入ってきますから、高い価値を感じてくれる相手、高い相乗効果が見込める相手のいる方向性がわかっています。また、買い手ニーズの情報も自然と集まってくるので、適切な相手と繋いでくれる可能性は高まります。
要は、技術の判断力と業界内のネットワークを持ったアドバイザーが、M&Aでの中小製造業の価値を高めてくれるのです。しかし残念ながら、現状では製造業に精通したM&Aアドバイザーは少ないと言っていいかもしれません。
製造業での案件は、案件化までの手間がかかり金額も高めのため、最終合意に至るまでの時間がかかる傾向があります。それが製造業のM&Aが活発にならない背景の一つとなっています。
ただし、製造業のM&Aではアドバイザーの存在がその会社の価値を大きく左右することは間違いありませんから、業界に精通したアドバイザーを見つけて相談するのが成功の近道になります。