人材不足の原因は、2012年以降の「団塊世代の退職」
大手製造業の収益が伸びる中、今後の設備投資や国内回帰もより顕著なものになっていくと考えられます。しかしながら、製造業ではそこで人材不足の問題に突き当たります。
大手製造業であれば、中小企業と違って、ある程度の人材確保は可能ですが、例えば「国内で新事業を開始する」「国内の設備を拡充して生産能力を高める」などとなった時に、社内から十分な人員を投入できる企業は極めて稀です。
その原因の一つは、2012年以降に問題となった団塊の世代の大量退職です。団塊の世代といえば、その世代の多くが還暦を迎える2007年から問題視されてきましたが、就業意欲が強かったことや、60歳以降の継続雇用が進んだことで先延ばしにされてきました。しかし2012年には65歳を迎え、多くの人が引退を迫られることになりました。これがいわゆる2012年問題と呼ばれたものです。
「新しい人材」の確保もうまくいっていない
今の高齢者は元気な人が多いので、65歳を超えてもなお仕事を続けている人も少なくありません。しかし、年数を経るに従って体力的に厳しくなる人が増えており、2016年現在は、大量の退職者が出ている真っ最中です。
これは製造業に限った問題ではありませんが、製造業にとって痛手なのは、団塊世代に技能工が多かったことです。日本の黄金期のものづくりを支えてきた人たちのリタイアは、思った以上に現場に影響を及ぼし、人手不足が広がっているのです。
また、新しい人材の確保もうまくいっていない状況です。厚生労働省は2015年9月に、製造業での就業者数が992万人となり、2012年12月の998万人以来の1000万人割れだと発表しました。これは対前年比で7か月連続の減少です。
2016年の大学卒の求人倍率を見ても1.73倍で、前年の1.61倍から上昇していますし、製造業の対前年増減率で言えば10.8%も増加しているというデータが出ています(リクルートワーク研究所「大卒求人倍率調査」より)。これらのデータを見れば、今や製造業の人材や技能工が貴重な存在になってきていることがわかります。
【図表 求人総数および民間企業就職希望者数・求人倍率の推移】