(※写真はイメージです/PIXTA)

現代社会において、相続は単なる財産の承継にとどまらず、家族の歴史や人間関係が複雑に絡み合う問題です。特に、核家族化やライフスタイルの多様化が進むなかで、予期せぬ相続問題に直面するケースが増えています。本記事ではAさんの事例とともに、過去の人間関係や財産管理の不備による相続時トラブルについて、木戸真智子税理士が解説します。※プライバシーのため、実際の事例内容を一部改変しています。

明らかになる「娘」の存在

Aさんにとっての唯一の身内は甥です。実家の相続によって引き継いだ財産もAさんと甥で共有しているので、当然、Aさんの財産は甥が相続するしかありません。そこでさまざまな手続きを行うことに。手続きには大変な過程がありました。

 

死因を調べることはもちろんのこと、部屋の清掃も大きな負担です。賃貸物件であったため原状回復も必要になりました。多額の負担を甥が負うことに。叔母の遺産はその時点で判明しているものだけで2億円超ということがわかりましたが、口座も凍結されていましたし、そもそもほかにどのような財産があったのかもわかりません。わかっているのは、実家の土地1/2と親の代から受け継いでいる会社の株式などです。それ以外のことがわからないまま、平日は仕事、土日は遺品整理の生活がしばらく続きました。

 

そんなとき書斎から、1枚のメモが見つかります。そこにはある女性について書かれていました。Aさんはその女性のことをとても大事に思っていた、といった旨でした。甥はその女性に心当たりがなく、誰なのか探したところ、衝撃の事実が発覚します。

 

どうやら、Aさんはこの女性と過去に養子縁組をしていたようなのです。女性が、Aさんの元配偶者の親戚らしい、ということはわかりました。離婚が決まってもしばらくのあいだは養子縁組の関係にあったようなのですが、そのあと養子縁組は解消されました。当時、甥は子どもだったので詳しいことがわからず、Aさんが亡くなって初めて女性のことを知ったのです。

 

叔母の死の経験を踏まえ、自身の終活に励む

そして、ギリギリになりつつもAさんの相続の申告を終えました。今回のことで甥は大変な思いをしたので、自分が万が一のときは家族が困ることがないようにしようと心に決めました。

 

まずは自分の財産のリスト作成、そしてパスワードなどもまとめました。ワンタイムパスワードがスマホに送信されることも多いので、スマホの暗証番号も家族に共有しました。考えだしたら、あれもこれもと気になって、気がつけばAさんが亡くなってから2年が経とうとしていました。

 

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