(※画像はイメージです/PIXTA)

人生100年時代の今、両親の人生も長くなっています。とはいえ、自分が50~60代になれば、お互いに残された時間は長いとはいえないでしょう。本記事では、ライフシフト研究者の河野純子氏の著書『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集して、後悔しない両親との時間の過ごし方について解説します。

親との関係で悔いを残さないために

平さんの選択は、父親との関係に悔いを残さず、また母親と新たな思い出をつくるとても素敵なものだと感じました。特に父親と一緒に働いた7年間は、大人になったいまだからこそできる男同士のいろいろな会話があったようです。

 

人生100年時代は、両親の人生も長くなっています。もう一度、両親との時間を楽しむこともできるのです。思えば私も18歳で茨城県水戸市の実家を離れ、もう40年以上、親と離れて暮らしています。幸いにも91歳の父、90歳の母ともに元気で、夫婦2人で仲良く暮らしていますが、年に数度の帰省では、この先あと何度会えるかわかりません。

 

まだ話ができるうちに、ひとりの個人として、両親それぞれがどんな人だったのか、話を聞いておかないと後悔するのではないかと思い始めています。

 

皆さんのなかにも同じような思いを持っている人がいるかもしれません。特に私たちの世代は、母親との価値観の違いに苦しんできた人も多いようです。十分に大人になったいま、ゆっくりと母親と向き合ってみるのもよさそうです。

 

忘れていた「原点」を思い出すことにもつながるかもしれません。もしご両親の健康に不安がなければ、一緒に旅をするのもよいですよね。私の会社員時代は忙しく、ほとんどどこへも連れていってあげられませんでしたが、一度だけ、仕事よりも両親との旅行を優先したことがあります。両親の結婚55周年を祝って、ハワイ島を旅したのです。

 

一番の目的は山岳部出身の父の「マウナケア火山に登りたい」という希望をかなえることでした。当時父は82歳、母は81歳。車で山頂まで行けるとはいえ、この年齢での4,200mの高度の移動は難しいとコーディネーターに断られたりしながらも、半年前から入念に手配をしていました。

 

ところが直前になって問題が発生。旅行日程と私が手掛けていた新規事業を売却するか否かの最終判断をする経営会議とが重なってしまったのです。

 

全力を注いでいた事業なので迷いましたが、私ができることはやり尽くしていたので、天命を待つ気持ちで旅立つことにしたのです。会議の結果は残念なものでしたが、おそらく私がいても結論は変わらなかったろうと思います。会議にかけるときには結論は出ている。会社とはそういうところなのです。

 

一方で両親はそのハワイ旅行をとても楽しんでくれました。結果的にこの旅行が両親にとって最後の海外旅行になったこともより印象を強くしているのだと思いますが、いまだに「世界各国を旅したけれど、あのハワイ旅行が人生で一番楽しかった」と何度も何度も言ってくれています。

 

実家のリビングに飾られた、マウナケア山頂で両親と私たち夫婦の4人で撮った美しい夕焼けの写真を見るたびに、仕事よりもこの「経験」を優先してよかったと思うのです。

 

 

河野 純子
ライフシフト・ジャパン取締役CMO
ライフシフト研究者

 

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※本連載は河野純子氏の著書『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし

60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし

河野 純子

KADOKAWA

60歳は人生の転換点。これからの40年は、楽しく働く、自由に生きる。 「とらばーゆ」元編集長にしてライフシフト・ジャパン取締役CMO、人生100年時代のライフシフトを研究する著者がひもとく、60歳からの仕事と暮らしのリア…

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