富裕層にも、富裕層を目指す人にも読んでほしい
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儲けるための資産運用、否定はしないが…
資産運用の目的はさまざまです。「ひと儲けして贅沢をしたい」という人もいるでしょうし、「株を買うこと自体がカジノの博打のようで楽しい」という人もいるでしょう。「リスクは嫌だけれど、堅実に増やせるなら投資してみたい」という人もいるでしょう。
老後資金にかんしては、「老後資金が足りないから投資で増やしたい」「老後資金を増やしたいけど、リスクは嫌だ」などが考えられます。しかし、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」ですから、投資で儲けようと思えばリスクを覚悟する必要があります。
「老後資金が足りないなら投資で増やしましょう」などといって投資商品を売りつけようとする業者もいるかもしれませんが、ただでさえ老後資金が足りないのに投資で失敗したら、悲惨な老後を覚悟しなければなりません。
分散投資の目的は、最悪を避けること
筆者は「投資で儲けてリッチな老後を過ごす」ことよりも、「なるべくリスクを避けて、悲惨な老後を送らずにすむ」ことを重視しています。「それなら老後資金は全額銀行預金」と考える読者も多いでしょうが、じつは預金もリスク資産なのです。
銀行の倒産を心配しているのではありません。銀行が倒産しても1,000万円までの預金は政府が代わりに払ってくれるので、庶民は安心していてよいのです。どうしても心配なら国債を買えばよいでしょう。
そうではなく、銀行預金のリスクはインフレが来て預金が目減りしてしまうことです。預金の金額は減らなくても、預金で買える物が減れば、老後の生活が貧しくなってしまいますから。
そこで、筆者は老後資金をさまざまな金融資産に分散させておくべきだと考えています。そうすれば「とても酷い目に遭うリスク」を減らすことができるからです。
お勧めは「預金・株・外貨」への分散投資
分散するなら、銀行預金と株と外貨がよいでしょう。「インフレで預金が目減りし、株価が暴落し、外貨も値下がりする」というリスクは皆無ではありませんが、可能性は低いでしょうから。
普通に考えても、3つの悪いことが同時に起きるという可能性は決して大きくありませんが、本件に関して重要なのは、株と外貨がインフレに強い資産だ、ということです。
インフレが来ると企業の売上もコストも増加しますから、差額の利益も増えます。利益が増えれば株価も上がります。短期的には金融引き締めで株価が下がる可能性もありますが、老後資金は長期投資なので、インフレが収まるまで待てば、「従来よりも高い物価水準で従来と同じ金利」が実現し、そのときには従来よりも高い株価が実現している可能性が高いでしょう。
インフレが来ると、外貨も値上がりする可能性が高いでしょう。日本がインフレになれば、海外のものが安いと感じられるようになるので、海外からの輸入が増えます。輸入代金のドルを買う人が増えればドルが値上がりしていく、というわけです。
もっとも、実際には日本株と米国株の投資信託を毎月積み立てて行くというのがよいでしょう。買った株がたまたま暴落するというリスクを避けるためには、多くの株を少しずつ買うべきですし、買った日がたまたま株価の高い日だったというリスクを避けるためには、毎月少しずつ買えば安心だからです。
投資信託というのは、投資家から集めた株で多くの株を買い、儲かっても損しても投資家に(手数料を差し引いて)そのまま返還する、というものですから、値上がりする株も値下がりする株も買うわけで、大儲けは狙えませんが大損のリスクも小さいわけです。
毎月少しずつ買えば、高いときも安いときも買うことになりますから、大儲けは狙えませんが、大損のリスクを小さくすることができるはずです。
分散投資は「異なる値動き」をする商品で
分散投資というのはさまざまな資産を持つことですが、その際に気をつけることは、同じような値動きをする資産だけを持つのでは分散投資にならない、ということです。たとえば輸出企業の株ばかり持っていれば、円高ですべての株が値下がりする可能性があるからです。
インフレに弱い資産である預金と、インフレに強い資産である株や外貨を持つことで、酷い目に遭うリスクを小さくすることができる、というわけです。
かつて筆者の友人に「自社株は買わない。ライバル企業の株を買う」という人がいました。ライバルとの競争に負ければ賞与が減るだろうが、そのときにライバルの株が上がっていれば酷い目に遭わないから、というのです。ライバル企業であれば、企業についての情報も得やすいですし、まったく知らない業界の株を買うより安心だ、ということもあったようです。
そのときは感心したのですが、結果は芳しくありませんでした。業界が構造不況業種になってしまったからです。やはり、業界事情がわかりにくくても、異業種の株を買っておくべきだったのでしょうね。
本稿は以上ですが、資産運用等々は自己責任でお願いします。また、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密でない場合があり得ます。
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塚崎 公義
経済評論家
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