相続は事前の準備が重要です。適切な対策を講じることで、相続税の負担を軽減し、円満な資産承継を実現することができます。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
自宅マンションが空室になるかも
母親は現在入院しており、リハビリに励んでいるところですが、主治医の判断では自宅に戻って生活するのは難しいと言われています。マンションなのでほぼバリアフリーではありますが、それでも、車椅子になったとするとお風呂やトイレはリフォームしないと生活しにくいのではと佳代さん。
そうなると自宅に戻るのではなく、介護をしてもらえる高齢者住宅や老人ホームに入るのが不安がない選択肢だということです。
このような母親の状況も踏まえて、相続の準備をどのようにすればいいかというのが、佳代さんのご相談でした。
相続になると分けにくい
自宅マンションは両親が2人で生活するために購入したもので、2LDK、65㎡。管理費と修繕積立金で、毎月4万円かかります。
賃貸しているマンションは下記の通りです。
A 20㎡ 受取家賃85,000円 管理費、修繕積立金 16,000円
B 25㎡ 受取家賃95,000円 管理費、修繕積立金 13,000円
それぞれ築年数は20年程度ですが、最寄駅から近く、ほとんど空室にならずに賃貸しています。
相続人は4人、不動産が3つですので、不動産が分けにくいという現状があります。さらに、自宅のマンションの時価は賃貸しているマンションの3倍程度あり、このままでは公平にとできそうにありません。
空室になると費用は持ち出し
このまま母親が自宅に戻れなくて、空室のまま、何年か維持するとなると、毎月4万円かかる管理費・修繕積立金と固定資産税で70万円程度の支出が必要です。他のマンションの家賃収入から払えるものの、新たに老人ホームの費用も発生するとなると負担になるため、空室のまま維持することは避けたほうがいいとアドバイスしました。
母親の荷物を整理して、賃貸する方法もありますが、賃貸するには水回りなどの設備を入れ替えてリフォームする必要があり、500万円程度の費用も必要になります。
また、相続で分けにくい課題の解決にもなりません。ならば、売却して、賃貸しやすいコンパクトなマンションに買い替えることをアドバイスしました。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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