(※画像はイメージです/PIXTA)

60歳で定年を迎え、そのあとは継続雇用で65歳まで働くという人が多いと思います。その場合、いったん退職金をもらって新たに「嘱託」として65歳までの雇用契約を結ぶのが一般的ですが、問題はその雇用契約の中身。仕事内容や勤務時間が全く変わらずとも給料が50~75%と激減してしまうケースも少なくありません。本記事では、ライフシフト研究者の河野純子氏の著書『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集して、60代継続雇用に待ち受ける厳しい現実について解説します。

給料は50~75%に…それでも87.4%が継続雇用を選択

皆さんの会社はいかがでしょうか。データが示す通り、60歳で定年を迎え、そのあとは継続雇用で65歳まで働けるという人が多いと思います。その場合、いったん退職金をもらって新たに「嘱託」(法的には定義はなく「契約社員」と同じ)として65歳までの雇用契約を結ぶのが一般的です。

 

問題はその雇用契約の中身です。リクルートジョブズリサーチセンターの調査では、定年後の継続雇用で仕事内容が全く変わらなかった人は54.4%。あまり変化がなかった人が28.9%。勤務時間は変化なしもしくは増えた人が44.9%です。

 

一方で給与が変わらなかった人は18.8%のみ。81.2%の人の給与が下がっていて、もっとも多い回答は定年前の50〜75%未満(40.3%)になったという結果でした(「シニア層の就業実態・意識調査 2023 個人編60〜74歳」 数字は女性の回答)。

 

皆さんの中には50代半ばで役職定年を経験した人、これから経験する人もいるかと思います。年齢で一律的に役職からはずされる役職定年という制度も理不尽ですよね。役職定年によって約6割の人の働くモチベーションがダウンしているという調査結果もあります(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構)。

 

給与も管理職手当がなくなるなどして役職定年前の50〜75%にダウンする人が多くなっていますが、ただこれは役割が変わった結果なのでまだ理解できるように思います。

 

けれども定年後の継続雇用で、仕事内容や勤務時間が変わらないのに、給与が大幅に下がるというのは納得がいかないという人は多いはずです。

 

にもかかわらず、60歳で定年を迎えた人のうち87.4%が継続雇用を選んでいます(厚生労働省「高年齢者雇用状況等報告」2023年)。

 

その理由は、「職場や勤務地などを変えたくなかった」(52.8%)、「今まで培ったスキルやノウハウをそのまま生かせるから」(51.1%)、「会社から継続を頼まれた」(33.9%)、「転職していちから新しい人間関係を構築したくない」(24.4%)、「転職活動が面倒」(21.7%)、「転職して新しい仕事を覚える自信がない、覚えるのがいや」(19.4%)、「転職しても待遇が下がるのは一緒だから」(16.7%)、「転職しても自分の希望に合う仕事がなさそう」(16.1%)と続きます(前述「シニア層の就業実態・意識調査 2023 個人編60〜74歳」 数字は女性の回答)。

 

こうしてみてみると、転職市場は厳しそうだし、新しいことを学んだり、人間関係を築いたりするのも面倒、だったらいまの職場で65歳まで我慢して働くのが得策、いわば継続雇用の5年間は「年金が支給されるまでの待ち時間」という意識が強いように感じます。

 

 

河野 純子

ライフシフト・ジャパン取締役CMO

ライフシフト研究者

 

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※本連載は河野純子氏の著書『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし

60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし

河野 純子

KADOKAWA

60歳は人生の転換点。これからの40年は、楽しく働く、自由に生きる。 「とらばーゆ」元編集長にしてライフシフト・ジャパン取締役CMO、人生100年時代のライフシフトを研究する著者がひもとく、60歳からの仕事と暮らしのリア…

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