事故物件には共通する特徴があり、とくに孤独死が発生する物件には一定の傾向が見られるといいます。それらの要素は、住人の健康や精神状態にどのような影響を与えるのでしょうか。本稿では、事故物件を専門に扱う「成仏不動産」を展開する花原浩二氏、税理士・公認会計士の木下勇人氏、税理士・不動産鑑定士の井上幹康氏による著書『不動産オーナー・管理会社のための 事故物件対応ハンドブック』(日本法令)より、事故物件の特徴について詳しく解説します。
住環境の特徴②カビ
ゴミ屋敷に通じるところがありますが、カビが発生している物件です。発見が遅れたためにカビが発生していたという場合もありますが、窓を開けて換気をしていないのか、立地的に湿気の多い場所だからなのか、壁紙や水廻りにカビが生えている物件が多く見られます。
2021年9月7日のウェブ版デイリー新潮に掲載されている「事件現場清掃人は見た48室のうち3分の1が事故物件というヤバすぎるマンションの問題点」では、『事件現場清掃人死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏が次のように述べています。
「カビは感染症や中毒、アレルギーといった健康上の問題を引き起こします。極論なことを言えば、私は『カビが人を殺す』とさえ思っています。特殊清掃の現場は、例外なくジメジメしていてカビ臭く、壁面にはカビによって生じた黒い斑点があることが少なくありません」
「ワンフロアに6部屋ありましたが、なんと半分の3部屋が事故物件でした。こんな例は初めて聞いたので、愕然としましたね。3つの部屋のドアにはガムテープが貼られ、リフォームもせず放置されていました。気になって上の階にも行ってみると、2部屋が事故物件で、同じようにガムテープが貼られていました」
「不動産屋の話では、48部屋のおよそ3分の1が事故物件になっていたそうです。しかも、そのほとんどがリフォームされていません。というのは、部屋のオーナーの利回りは、家賃から管理費を差し引くと月2万円ほどで、年間20数万円です。ユニットバスをリフォームすると300万円かかりますから、これでは割に合わないというので、そのまま放置されていたようです」
カビと事故物件の関係
読者の皆さんの中には、なぜカビと事故物件が関連するか、不思議に思う方もいるでしょう。JA岐阜厚生連中濃厚生病院のサイトに、「肺真菌症」について記述があります。これを見ると、少しは関係性が見えてくるのではないでしょうか。
「肺真菌症は、真菌(カビ)を吸い込むことによって肺に発病する病気です。真菌は空気などの環境中に存在しており、通常、健康な人には深在性真菌症が起こることはまれです。特に高齢者や免疫抑制剤の治療中などの免疫が低下した人で病気の原因となることがあります。急激に症状が進行する場合と緩やかな経過をとる場合があり、発熱、たん、血痰、呼吸困難、全身倦怠感などの症状がおこりえます。」
上記のように、健康的な人にとってそれほど直接的な問題にならないカビですが、体力が衰えている人や抵抗力の弱い高齢者にとっては、カビ自体がアレルギー源となり、喘息や鼻炎、皮膚炎などを発症する場合もあり、重症な病気を引き起こす脅威となり得ます。
また、カビによって引き起こされる病気に「アスペルギルス症」というものがありますが、高齢者にとっては健康被害に大きく影響してくると見られます。
横浜市のサイトには下記のような記述があります。
アスペルギルスというカビは、エアコンやカーペットに発生しやすく、免疫力が低下している場合や肺に疾患がある場合、肺に菌糸や血の塊が形成され、咳や痰が続くなど喘息のような症状を引き起こすことがあるといわれています。
マークスライフ株式会社
代表取締役
1977年、兵庫県豊岡市生まれ、流通科学大学情報学部卒業。阪神・淡路大震災の経験から地震に負けない家づくりをしたいと大和ハウス工業入社。2011年横浜支社分譲住宅営業所所長。2016年10月、増え続ける空き家問題を中心に、世の中の困りごとを不動産の可能性を追求することで解決したいと独立。事故物件のイメージアップや高額買取りへの挑戦を通じて事故物件マーケットを構築する「成仏不動産」、葬儀を儀式のビジネスから総合エンディングビジネスへと転換する支援サービス「葬祭事業者サポートサービス」など複数のサービスを展開。日本国内のみならず海外からも数多くの取材を受け、不動産業界の革命児として注目を浴びている。
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連載不動産オーナー・管理会社のための事故物件対応ハンドブック
相続・事業承継専門『税理士法人レディング』 代表
税理士
公認会計士
宅地建物取引士
1975年、愛知県津島市出身。大学時代に宅建、不動産鑑定士を取得。28歳で公認会計士試験に合格し、「監査法人トーマツ」名古屋事務所に入所。上場企業級の非上場会社オーナーファミリーの事業継承対策に従事。約5年勤務の後、33歳で独立し、名古屋で公認会計士木下事務所・木下勇人税理士事務所を開設。翌2009年に、相続・事業承継専門の税理士法人レディングの代表となる。2017年、東京にも事務所を開設。現在、全国の税理士向け、保険募集人向け、不動産事業者向けなど、相続を取り巻くプロ相手に年間150回の研修講師をしながら、相続に関する情報を発信している。不動産鑑定士第2次試験合格者。AFP資格認定。東京税理士会 京橋支部所属。
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税理士・不動産鑑定士
税理士法人トーマツ(現デロイトトーマツ税理士法人)にて、東証一部上場企業含む法人税務顧問、税務調査対応、組織再編、IPO支援、M&Aの税務DD業務、税制改正セミナー講師、財産評価を中心とした資産税実務を経験。退職後、2018年7月に税理士として独立開業。非上場株式や不動産の評価業務、中小企業や不動産オーナーの事業承継コンサルティング業務を得意とする。税理士向けセミナー講師や執筆活動も行っており、税理士からの相談実績も多数。著書に『税理士のための不動産鑑定評価の考え方・使い方』(単著・中央経済社)がある。
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