(※写真はイメージです/PIXTA)

老後資金を少しでも増やしたいと考え、NISAやiDeCoを活用する人は少なくありません。税制面のメリットがある一方で、投資である以上、元本割れの可能性や、使う時期との相性を考える必要があります。制度を利用すること自体が目的になってしまうと、老後の生活資金を守るはずの運用が、かえって不安の原因になることもあります。

「増やせるはずだった」退職金を運用に回した70歳男性

工藤さん(仮名・70歳)は、65歳で会社を退職しました。退職時に受け取った退職金は約1,800万円。預貯金と合わせると、老後資金は3,000万円ほどありました。

 

「ものすごく余裕があるわけではないけれど、贅沢しなければ何とかなると思っていました」

 

ただ、工藤さんにはひとつ気がかりがありました。年金収入だけでは、毎月の生活費をすべて賄うのは難しいのではないかという不安です。

 

総務省『家計調査(2025年)』によると、高齢単身無職世帯の可処分所得は月約11.8万円、消費支出は月約14.8万円。平均で月3万円ほどの赤字となっています。

 

「預金を取り崩すだけでは、いつか減っていく。少しでも運用したほうがいいのではと思ったんです」

 

そんなとき、金融機関で勧められたのがNISAとiDeCoでした。NISAは投資で得た利益が非課税になる制度で、金融庁の資料では非課税保有限度額は1,800万円、成長投資枠のみでは1,200万円が上限です。金融庁は、投資には元本割れのおそれがある一方、長期・積立・分散投資によってリスクと付き合いながら資産形成に取り組む考え方を示しています。

 

「説明を聞いていると、やらないほうが損なのかなと思ってしまいました」

 

工藤さんは、退職金の一部をNISA口座で投資信託に回しました。さらに、現役時代に加入していたiDeCoについても、受け取り方を検討しました。iDeCoは老齢給付金の受給開始時期を60歳から75歳までの間で選択できます。

 

「長く置いておけば増える可能性があると言われて、すぐ受け取らなくてもいいのかなと考えました」

 

当初は順調に見えました。評価額が増えた時期もあり、「もっと早く始めていればよかった」と思ったこともあったそうです。

 

「画面上の数字が増えると、安心した気持ちになるんです。預金に置いておくより、ずっといいように見えました」

 

しかし、その安心感は長く続きませんでした。

 

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