高齢化が進んでひとりで暮らす高齢者が増えれば、「孤独死」の件数も増加することが予想されます。自らが経営する賃貸住宅で「居住者」が亡くなっていることが判明した……というケースも、決して他人事ではありません。そこで本稿では、花原浩二氏、木下勇人氏、井上幹康氏の著書『不動産オーナー・管理会社のための 事故物件対応ハンドブック』(日本法令)より、賃貸住宅で居住者が亡くなっていた場合の対応方法について詳しく解説します。
状況別の対応(一般的な対応)
賃貸住宅の入居者が亡くなった際の一般的な対応方法を解説します。賃貸人(大家)や不動産管理会社は、事前にこのようなケースを知ることで、不測の事態にスムーズに対応することができると考えます。
(1)孤独死
発見のパターンで一番多いのは、下記のような出来事をきっかけに近隣の方や、ほかの部屋の入居者、不動産管理会社から入る連絡です。
- 臭気や虫(ハエ)の大量発生
- 新聞や郵便物がたまっている
- 部屋の電気がつけっぱなし
- 親族から連絡が取れないと大家または不動産仲介業者に連絡が入る
- 賃貸人(大家)または不動産管理会社によって家賃や管理費の滞納が発覚する
① 賃貸人(大家)の対応
(ⅰ) 緊急連絡先に連絡
親族以外からの連絡の場合は、まず緊急連絡先や保証人に連絡を入れる必要があります。長期旅行に行っていたり、入院していたりするようなケースもあります。関係者に連絡をとり、入居者の生存確認をしてもらいます。
(ⅱ) 現場確認
親族からの連絡で発覚した場合や、(ⅰ)の対応で生存確認ができず、現地で臭気や虫などが発生している場合は現場の確認が必要になります。現場に到着し、室外からの確認で明らかに異変が感じられた場合は、入室せず、その場で警察に連絡を入れるようにしてください。入居者が亡くなっていた場合、死亡原因によっては感染症のリスクがあります。また、不用意に入室することで、事件性があった場合、捜査に支障がでる場合もあります。
親族が近くに住んでいる場合などは、立ち会ってもらうことをおすすめします。死亡が確認された場合は、その後の警察対応や葬儀、特殊清掃によって臭気を抑える近隣対策が必要になります。
(ⅲ) 警察による現場検証
現場検証のために鍵を開ける必要があります。
(ⅳ) その後の対応
親族は突然のことでかなり動揺される場合があります。また葬儀の段取りや親族間での話合いなど決めなくてはいけないことが多く、慌ただしくなります。不動産賃貸人(大家)の立場であれば一刻も早く処理をしたいところではありますが、一旦落ち着いて親族に寄り添いましょう。
一方で、現場に臭気が発生している場合、不動産賃貸人(大家)、不動産管理会社の立場として最も大事なことは、近隣対策になります。近隣まで臭気の影響がある場合は、悪評が広がるだけでなく、退去リスクも高まります。この場合の臭気対策などは、親族や保証人に費用負担をお願いする必要があります。まずは、一次消臭と臭いが漏れない対策を取り急ぎ行うようにしましょう。
マークスライフ株式会社
代表取締役
1977年、兵庫県豊岡市生まれ、流通科学大学情報学部卒業。阪神・淡路大震災の経験から地震に負けない家づくりをしたいと大和ハウス工業入社。2011年横浜支社分譲住宅営業所所長。2016年10月、増え続ける空き家問題を中心に、世の中の困りごとを不動産の可能性を追求することで解決したいと独立。事故物件のイメージアップや高額買取りへの挑戦を通じて事故物件マーケットを構築する「成仏不動産」、葬儀を儀式のビジネスから総合エンディングビジネスへと転換する支援サービス「葬祭事業者サポートサービス」など複数のサービスを展開。日本国内のみならず海外からも数多くの取材を受け、不動産業界の革命児として注目を浴びている。
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連載不動産オーナー・管理会社のための事故物件対応ハンドブック
相続・事業承継専門『税理士法人レディング』 代表
税理士
公認会計士
宅地建物取引士
1975年、愛知県津島市出身。大学時代に宅建、不動産鑑定士を取得。28歳で公認会計士試験に合格し、「監査法人トーマツ」名古屋事務所に入所。上場企業級の非上場会社オーナーファミリーの事業継承対策に従事。約5年勤務の後、33歳で独立し、名古屋で公認会計士木下事務所・木下勇人税理士事務所を開設。翌2009年に、相続・事業承継専門の税理士法人レディングの代表となる。2017年、東京にも事務所を開設。現在、全国の税理士向け、保険募集人向け、不動産事業者向けなど、相続を取り巻くプロ相手に年間150回の研修講師をしながら、相続に関する情報を発信している。不動産鑑定士第2次試験合格者。AFP資格認定。東京税理士会 京橋支部所属。
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税理士・不動産鑑定士
税理士法人トーマツ(現デロイトトーマツ税理士法人)にて、東証一部上場企業含む法人税務顧問、税務調査対応、組織再編、IPO支援、M&Aの税務DD業務、税制改正セミナー講師、財産評価を中心とした資産税実務を経験。退職後、2018年7月に税理士として独立開業。非上場株式や不動産の評価業務、中小企業や不動産オーナーの事業承継コンサルティング業務を得意とする。税理士向けセミナー講師や執筆活動も行っており、税理士からの相談実績も多数。著書に『税理士のための不動産鑑定評価の考え方・使い方』(単著・中央経済社)がある。
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