(※画像はイメージです/PIXTA)

私たちは「人生100年時代」を生きており、定年を迎える60歳から40年の時間があります。健康やお金など不安の種は尽きませんが、不安がっているだけでは何も始まりません。この先をどう生きていくのか、いまからどんな準備をしておけばいいのか考えておく必要があるでしょう。本記事では、ライフシフト研究者の河野純子氏の著書『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集して、老後資金問題について解説します。

いつまで働いて稼ぐかで、必要な老後資金は大きく変わる

では自分に必要な「老後資金」はいくらなのでしょうか。

 

ここでまず考えなければいけないのが、いつまで収入を伴う仕事をして、いつからを「老後」と考えるのかという点です。それによって必要な「老後資金」が大きく異なります。

 

「人生80年時代」は、多くの人が60歳で定年を迎えて、そこからが「老後」。年金をもらいながら悠々自適に暮らすことができました。「人生100年時代」はどうでしょうか。いつまで収入を伴う仕事をしていく必要があるのでしょうか。

 

答えは「できるだけ長く」です。「Live Longer. Work Longer(長く生き、長く働く)」。この言葉は、経済協力開発機構(OECD)が2006年にまとめた報告書の原題です。

 

日本語版の訳者で労働政策の第一人者である濱口桂一郎氏は、「これこそが高齢社会の雇用と社会保障政策の責任ある唯一の答え。世界的にはもはや疑問を呈する人がいないぐらい一致した結論」だと書いています(濱口桂一郎『日本の雇用と中高年』ちくま新書)。

 

つまり「長寿社会は長く働く社会」だということは、もう20年近く前から繰り返し言われている世界的な結論なのです。

 

内閣府が60歳以上の男女に実施した調査でも「何歳ぐらいまで収入をともなう仕事をしたいですか?」という問いに対するもっとも多い回答は「働けるうちはいつまでも」で36.7%(内閣府「現在収入のある仕事をしている人の回答/高齢者の経済生活に関する調査」2019年)。

 

「80歳ぐらいまで」が7.6%、「75歳ぐらいまで」が19.3%、「70歳ぐらいまで」が23.4%。ここまでの合計が87%という結果です。

 

では「働けるうち」とはいつまでなのかというと、前述の通り私たちは85歳ぐらいまでは「アクティブ期」なので普通に働けます。それ以降も95歳までは自立して暮らせますから、働き続けることもできるでしょう。

 

仕事の能力も、リクルートワークス研究所の調査を見ると、年齢を重ねてもそれほど大きな低下は感じられません。

 

あくまで自己評価ですが、年代別にこの5年間で「能力が向上した」と感じる人から「能力が低下した」と感じる人を引いた指数は、60代後半でマイナス11%、70代後半でもマイナス14.5%です。

 

能力別にみると、「処理力」「論理的思考力」は低下するものの、「対人能力」は伸び続けるという結果が出ています(リクルートワークス研究所「シニアの就労実態調査」2021年)。

 

つまり私たちは95歳まで働けると考えてOK、理想は生涯現役、「老後」なんて言葉は死語といいたいところですが、ここは頑張りすぎず、「90歳まで収入を伴う仕事をする」ことを目標としてみてはどうかと思います。

 

90歳以降も決して「老後=隱居」ではなく、収入にはこだわらずボランティアなどで社会活動は続けて、生涯現役を目指すというイメージです。

 

 

河野 純子

ライフシフト・ジャパン取締役CMO

ライフシフト研究者

 

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※本連載は河野純子氏の著書『60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし

60歳の迎え方 定年後の仕事と暮らし

河野 純子

KADOKAWA

60歳は人生の転換点。これからの40年は、楽しく働く、自由に生きる。 「とらばーゆ」元編集長にしてライフシフト・ジャパン取締役CMO、人生100年時代のライフシフトを研究する著者がひもとく、60歳からの仕事と暮らしのリア…

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