いつまで働いて稼ぐかで、必要な老後資金は大きく変わる
では自分に必要な「老後資金」はいくらなのでしょうか。
ここでまず考えなければいけないのが、いつまで収入を伴う仕事をして、いつからを「老後」と考えるのかという点です。それによって必要な「老後資金」が大きく異なります。
「人生80年時代」は、多くの人が60歳で定年を迎えて、そこからが「老後」。年金をもらいながら悠々自適に暮らすことができました。「人生100年時代」はどうでしょうか。いつまで収入を伴う仕事をしていく必要があるのでしょうか。
答えは「できるだけ長く」です。「Live Longer. Work Longer(長く生き、長く働く)」。この言葉は、経済協力開発機構(OECD)が2006年にまとめた報告書の原題です。
日本語版の訳者で労働政策の第一人者である濱口桂一郎氏は、「これこそが高齢社会の雇用と社会保障政策の責任ある唯一の答え。世界的にはもはや疑問を呈する人がいないぐらい一致した結論」だと書いています(濱口桂一郎『日本の雇用と中高年』ちくま新書)。
つまり「長寿社会は長く働く社会」だということは、もう20年近く前から繰り返し言われている世界的な結論なのです。
内閣府が60歳以上の男女に実施した調査でも「何歳ぐらいまで収入をともなう仕事をしたいですか?」という問いに対するもっとも多い回答は「働けるうちはいつまでも」で36.7%(内閣府「現在収入のある仕事をしている人の回答/高齢者の経済生活に関する調査」2019年)。
「80歳ぐらいまで」が7.6%、「75歳ぐらいまで」が19.3%、「70歳ぐらいまで」が23.4%。ここまでの合計が87%という結果です。
では「働けるうち」とはいつまでなのかというと、前述の通り私たちは85歳ぐらいまでは「アクティブ期」なので普通に働けます。それ以降も95歳までは自立して暮らせますから、働き続けることもできるでしょう。
仕事の能力も、リクルートワークス研究所の調査を見ると、年齢を重ねてもそれほど大きな低下は感じられません。
あくまで自己評価ですが、年代別にこの5年間で「能力が向上した」と感じる人から「能力が低下した」と感じる人を引いた指数は、60代後半でマイナス11%、70代後半でもマイナス14.5%です。
能力別にみると、「処理力」「論理的思考力」は低下するものの、「対人能力」は伸び続けるという結果が出ています(リクルートワークス研究所「シニアの就労実態調査」2021年)。
つまり私たちは95歳まで働けると考えてOK、理想は生涯現役、「老後」なんて言葉は死語といいたいところですが、ここは頑張りすぎず、「90歳まで収入を伴う仕事をする」ことを目標としてみてはどうかと思います。
90歳以降も決して「老後=隱居」ではなく、収入にはこだわらずボランティアなどで社会活動は続けて、生涯現役を目指すというイメージです。
河野 純子
ライフシフト・ジャパン取締役CMO
ライフシフト研究者
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