親から子の口座への「資金移動」は贈与にあたる?母名義の口座から相続税を納付…税務署は贈与税の課税対象と主張、審判所の判断は?【税理士が解説】

親から子の口座への「資金移動」は贈与にあたる?母名義の口座から相続税を納付…税務署は贈与税の課税対象と主張、審判所の判断は?【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

国税トラブル専門の解決窓口である、「国税不服審判所」をご存じでしょうか。裁判所とは異なり、司法ではなく税務行政部内における第三者的機関として機能しています。税理士である高橋創氏が、この「国税不服審判所」での裁決事例のなかから、相続に関するトラブルを取り上げ、裁決にいたった経緯について解説します。

「贈与ではない」と主張するには、明確な「証拠」が必要

この事例では、親子間で資金のやり取りがあった場合、それが贈与でないことを証明できなければ、贈与とみなされると判断されています

 

民法549条において、贈与は「当事者の一方がある財産権を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」と定められています。

 

つまり、「贈与はお互いが意思表示をしていれば成立する」ということになりますが、実際トラブルに発展した際に「お互いの意思」を根拠とするのはなかなかに難しいため、実際には「贈与があった(なかった)ことをどう証明するのか」が問題となります。

 

国税不服審判所の判断の決め手となったのも、Aさんが両親の口座からの資金移動の理由を明確に説明できないことでした。

 

「贈与がなかったことを証明せよ」というと悪魔の証明のように思えますが、「労働の報酬だった」「立て替えてもらっただけ」という主張についても、契約書や返済の記録といった明確な証拠を示すことができなかったことが敗因でしょう。

 

親子間のなにげないお金の貸し借りでも、贈与税の課税対象となる可能性があります。無用な贈与税課税を避けるためには、「金銭消費貸借契約書」などの書面や、返済の記録を残しておきたいところです。

 

 

高橋 創

税理士

 

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