(※写真はイメージです/PIXTA)

本連載は、三井住友DSアセットマネジメント株式会社が提供する「市川レポート」を転載したものです。

 

●首脳会談は一定の成果、対日関税や円相場に直接の言及もなく、市場は無難に通過との見方。

●ただ、トランプ関税は首脳会談後も継続、各国経済や市場への影響が見通しにくい状況は不変。

●相互関税の日本への影響は限定的か、鉄鋼・アルミニウムへの関税は例外措置の継続で協議も。

首脳会談は一定の成果、対日関税や円相場に直接の言及もなく、市場は無難に通過との見方

石破茂首相とトランプ米大統領は米東部時間2月7日午前(日本時間2月8日未明)、ワシントンのホワイトハウスで会談し、共同記者会見を行いました。石破首相は、①日本の対米投資を1兆ドルまで引き上げること、②米国産の液化天然ガス(LNG)の輸入を増やすこと、③日本が防衛費を2027年度までにGDP比で2%にすることなどを、トランプ大統領に伝えました(図表1)。

 

[図表1]日米首脳会談の主なポイント

 

トランプ大統領は、①友好国、同盟国を100%守るため、米国の抑止力を提供していくこと、②日本に10億ドル分の防衛装備品を売却することなどを明らかにしました。また、③日米安全保障条約第5条が尖閣諸島に適用されることも確認されました。なお、対日関税や円相場への直接的な言及はなく、USスチールは買収ではなく投資で合意としたものの、協議は継続となり、市場では今回の会談は無難に通過したとの受け止めが多くみられました。

ただ、トランプ関税は首脳会談後も継続、各国経済や市場への影響が見通しにくい状況は不変

ただ、トランプ大統領は共同記者会見で「相互関税」を計画していることを明らかにし、10日か11日に発表すると述べました。その後、9日には米国が輸入する鉄鋼・アルミニウム製品に25%の追加関税を課す方針を示し、10日に大統領令に署名しました。トランプ大統領の関税政策は、日米首脳会談後も継続しており、各国の経済や金融市場への影響が見通しにくい状況に変わりはありません。

 

米国は相互関税を導入し、貿易相手国が米国製品の輸入に課す関税と同水準まで、相手国製品の輸入関税の引き上げを考えている模様です。ただ、製品ごとに個別に適用していくのか、国ごとに一律適用していくのか、日本時間2月12日午前8時時点で詳細は明らかになっていません。日本の場合、製品ごとなら農産品に高い税率を設定していますが、国ごとなら相対的に税率の低いグループに入ります(図表2)。

 

[図表2]主要各国の関税率の状況

相互関税の日本への影響は限定的か、鉄鋼・アルミニウムへの関税は例外措置の継続で協議も

これらを踏まえると、相互関税が導入された場合の、日本への直接的な影響は限定的とも考えられますが、例えば日本の農産品の高い税率を、米国が自動車の輸入関税引き上げで埋め合わせるとすれば、影響はより大きくなる恐れがあります。なお、相互関税が、すべての輸入品に一律10%から20%の追加関税を課すというトランプ大統領の考えの代替となれば、貿易を巡る不確実性はいくらか低下するとの見方もあります。

 

一方、鉄鋼・アルミニウム製品への25%の追加関税については、日本製品にも適用されます。現在は例外措置で、鉄鋼は25%(ただし関税割当で年間125万トンまではゼロ%)、アルミニウムは10%の関税となっていますが、これらの措置が撤廃され、いずれも25%となる見通しです。25%の追加関税は、米東部時間3月12日午前0時1分から発動されますが、日本を含む各国は、例外措置の継続について米国と協議を行うものとみられます。

 

(2025年2月12日)

 

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日米首脳会談の総括とトランプ関税のアップデートについて【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』)。

 

市川 雅浩

三井住友DSアセットマネジメント株式会社

チーフマーケットストラテジスト

 

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