リスクテイクが強まり、日銀は利上げを迫られる
日銀は1月30日と31日に金融政策決定会合を行い、0.25%の利上げを実施しました。
経緯を振り返ると、昨年12月の金融政策決定会合後に植田総裁が示したハト派スタンス(「もうワンノッチ」「米新政権や賃上げの動向を見たい」)によって円安が大幅に進み、「次の利上げは(1月ではなく)3月か4月ではないか」との見方を出すアナリストも出てきました。
自らの政策スタンスで円安を招いた結果、これを鎮めるために利上げを実施した格好です。
筆者の拙い見立てをお伝えすると、今後も、米連邦準備制度理事会(FRB)は積極的な利下げを行わず、日銀は「円安によってさらなる利上げを迫られる」という、今回と同じプロセスを繰り返しそうです。「利上げは年内あと1回」ではなく、2回以上の利上げが実施される可能性も考えられます。
31日夕方に開かれた植田総裁の記者会見に関する筆者の印象は、「次の利上げまで距離がある」というものでした。為替相場の受け止めも似たもので、当日の円買いは限定的でした。
日銀はとにかく「金融市場に波風を立てない」ことを重視しているようです。昨年7-8月の経験もあるでしょうし、国内外のさまざまな主体からそのような指示が出ているか、それらの主体に自ら忖度をしている可能性があるでしょう。
こうしたスタンスを続ける限り、現在の投機色の強い金融市場は「円キャリー・トレードで勢いに乗っていく」でしょう。
現在の金融市場は、「ほかのファンドがリスクを取るために自分もリスクを取らなければならない」といったふうに、リスクテイクを互いに強めていく相場です。
他のファンドに勝つためにはリターンを増やす必要があり、リターンを増やすためには低金利の円を借りて、(期待リターンが高いと思しき)リスク資産に投資をすることが主たる選択肢のひとつと考えられます。
ファンド勢は「日銀のハト派姿勢」を抜け目なく収益源に変えていくでしょう。しかし、それが円安を、そしてやがては日銀の利上げを呼び込むでしょう。たしかに為替政策は財務省の管轄です。しかし、円安がインフレ期待を招いていて、インフレ率が2%を執拗に超えている限り、日銀は動かざるを得ません。
米国の新政権への期待が強まれば強まるほど、株価が上がれば上がるほど、利上げの可能性も強まります。そして、日銀の利上げはマーケットにとっての足かせとなるでしょう。
金融市場の楽観を見ているかぎり、まだまだ大手テクノロジー企業の株価の隆盛はつづく可能性もあります。バリュエーションがさらに高まっても不思議ではありません。他方で、しっかりと資産の分散を行いましょう。
重見 吉徳
フィデリティ・インスティテュート
首席研究員/マクロストラテジスト
注目のセミナー情報
【事業投資】1月13日(火)開催
トップ経営者が実践する節税方法を公開!
「即時償却による節税」×「想定利回り9.6%以上」×「手間なし」
無人運営コワーキングスペース「マイクロFCオーナー制度」の全貌
【国内不動産】1月17日(土)開催
建築会社だから実現する安定利回り6%・短期売却で30%超のリターン
東京23区で始める「土地から新築RC一棟投資」実践法
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■親が「総額3,000万円」を子・孫の口座にこっそり貯金…家族も知らないのに「税務署」には“バレる”ワケ【税理士が解説】
「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】
