前回は、不動産の「売却希望価格」を的確に設定する方法を説明しました。今回は引き続き、広さ、形、地盤など、土地の価格形成に影響する各要素について見ていきます。

ニーズが少ない「広すぎる土地」

○広さ

土地の価値は通常、単価と広さのかけ算で算出されます。1平米あたり20万円で広さが100平米なら20万円×100平米=2000万円となります。一般的な宅地などは単純にこの方法で価格を算定できるため、150平米なら3000万円、200平米なら4000万円です。

 

ところが〝広すぎる〟土地の場合には事情が異なります。1平米20万円と査定された1000平米の土地を売却すれば、通常なら2億円になるはずですが、広い土地はニーズが少なく買主が限られるため、価値を低く補正するケースが多いのです。

 

国税庁においても、相続税評価額を算定する際は土地の広さに応じた「補正率」を適用しています。たとえば1000平米なら補正率は0・55となっているので、1平米あたり20万円の土地は2億円ではなく、2億円に補正率をかけた1・1億円と査定されます。

 

これは税務上の取り決めですが、土地を売却するときにも広い土地を一括で売ると「広大地補正」をかけられることが少なくありません。

 

○向き(日当たり)

土地には向きがあります。一般的には道路と接している向きが土地の方向とされ、東西南北のどちらを向いているかによって土地の価値が変わります。

 

土地の向きは日当たりに直結しているため、もっとも日当たりが良好な南向きの土地は高く評価されます。次に高評価なのは東向き、そして西向き、北向きの順で下がっていくのが通常です。

高く評価される「土地の形」とは?

○形

同じ広さでも形によって土地の使い勝手は大きく異なります。正方形やあまり縦横の比率が極端ではない長方形の土地は用途が広く使いやすいので、高く評価されます。

 

一方、形が歪(いびつ)な土地は使い勝手が悪く、建物を建てても無駄なスペースができてしまうため評価が低くなりがちです。

 

○地盤

土地を利用する上では、地盤の脆弱性や土壌汚染が問題となることがあります。地盤の良し悪しはN値という数字で表され、数字が大きいほど固く優良な地盤とされます。岩盤や砂礫(されき)などの地盤は固くしまっていて、上に建物を建てても沈下したり地震の際に大きく揺れたりすることがありません。

 

一方、水を多く含む粘土や砂の地盤では、建物が簡単に沈下したり地震の際に液状化したりすることがあります。軟弱な地盤は適切な工事により改良できますが、工事の費用がかかるので土地の価値が低くなります。

 

○土壌汚染や埋設物

工場やガソリンスタンドなどの跡地では土壌汚染や埋設物が問題となることがあります。土壌汚染や埋設物があると、買主は土地を購入した後、処理のための手間やコストをかけなければなりません。土地の価格形成に大きく影響するため、2003年に改正された不動産鑑定評価基準では土壌汚染や埋設物がある場合には、不動産価格を査定する際、その処理コストを差し引くよう定められています。

本連載は、2016年8月16日刊行の書籍『経営者のための事業用不動産「超高値」売却術』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

経営者のための 事業用不動産「超高値」売却術

大澤 義幸

幻冬舎メディアコンサルティング

事業が悪化し経営苦に陥った中小企業経営者の切り札「不動産売却」。できるだけ高値で売却して多額の負債を返済したいと考えながらも、実際は買手の〝言い値″で手放せざるを得ないケースが多い。しかし、売れないと思っていた…

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