(写真はイメージです/PIXTA)

トランプ大統領の再選以来、ユーロ安がつづきました。ユーロは1999年に導入され、ギリシャ危機を乗り越えるなどをしながら第2の国際通貨を維持しています。しかし、トランプ2.0が始動することで再びユーロの持続可能性に疑問が投げかけられています。本稿では、ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり氏が、トランプ氏が大統領に就任することで、EU圏に与える影響や求められる対応について、詳しく解説します。

必要とされるトランプ2.0対応のユーロ制度のバージョンアップ

欧州の主流派の政治指導者や政策当局者は、トランプ大統領の就任演説や大統領令のリスト、ダボス会議での発言などから、EUが基本的価値として尊重する民主主義や法の支配、戦後のルールに基づく国際秩序を否定し、修正に動こうという意思を強く感じ取ったことだろう。

 

反DEIやパリ協定の離脱と化石燃料の推進、国際保健機関(WHO)からの離脱、反多様性・公平性・包摂性(DEI)や大手ハイテク企業との接近など、トランプ2.0とEUは真逆の方向に動き出している。欧州の民主主義への挑戦であり、EUにとっての脅威*という受け止めもあるほどだ。

*Heather Grabbe and Jean Pisani-Ferry “Political contagion in Europe: can the European Union survive Trumpism?” Bruegel First glance, 16 January 2025

 

トランプ2.0の米国はEUよりも中国・ロシアなど修正主義国家*との距離が近いという印象すら抱かせる。

*Angela Stent “Russia and China: Axis of revisionists?” Brookings Research, February 2020

 

ダボス会議の演説後の質疑応答でも貿易不均衡、北大西洋条約機構(NATO)の国防費ほか、米国の大手ハイテク企業への制裁金などへの不満を表明した。中国については、巨額の貿易赤字の是正の必要性を述べる一方、習近平主席を称賛し、中国とは常に素晴らしい関係を築いたとし、ロシア・ウクライナ戦争の停戦のための尽力への期待も述べた。

 

トランプ1.0と対峙したEUの執行機関・欧州委員会のユンカー前委員長は、トランプ大統領は「EUは米国に対抗するためのヨーロッパ人の発明」であり「常に敵」と考えていたと述べている*。

*UK can rejoin EU ‘in a century or 2,’ Juncker says POLITICO

 

EUを米国の挑戦と見るトランプ大統領が、ユーロを基軸通貨ドルへの挑戦と見ても不思議ではない。

 

安全保障体制での自立性の向上、競争力の回復のための構造改革に加えて、銀行同盟の完成や資本市場同盟の加速などによるユーロ制度の更なるバージョンアップも、トランプ2.0の世界に対応するEUにとって優先度の高い課題となっている。

 

米欧間の乖離の拡大は、西側の一角を占める日本にとって「漁夫の利」を得る機会というよりは、憂慮すべき事態と言え、注視する必要があると思われる。

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年1月24日に公開したレポートを転載したものです。

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