必要とされるトランプ2.0対応のユーロ制度のバージョンアップ
欧州の主流派の政治指導者や政策当局者は、トランプ大統領の就任演説や大統領令のリスト、ダボス会議での発言などから、EUが基本的価値として尊重する民主主義や法の支配、戦後のルールに基づく国際秩序を否定し、修正に動こうという意思を強く感じ取ったことだろう。
反DEIやパリ協定の離脱と化石燃料の推進、国際保健機関(WHO)からの離脱、反多様性・公平性・包摂性(DEI)や大手ハイテク企業との接近など、トランプ2.0とEUは真逆の方向に動き出している。欧州の民主主義への挑戦であり、EUにとっての脅威*という受け止めもあるほどだ。
*Heather Grabbe and Jean Pisani-Ferry “Political contagion in Europe: can the European Union survive Trumpism?” Bruegel First glance, 16 January 2025
トランプ2.0の米国はEUよりも中国・ロシアなど修正主義国家*との距離が近いという印象すら抱かせる。
*Angela Stent “Russia and China: Axis of revisionists?” Brookings Research, February 2020
ダボス会議の演説後の質疑応答でも貿易不均衡、北大西洋条約機構(NATO)の国防費ほか、米国の大手ハイテク企業への制裁金などへの不満を表明した。中国については、巨額の貿易赤字の是正の必要性を述べる一方、習近平主席を称賛し、中国とは常に素晴らしい関係を築いたとし、ロシア・ウクライナ戦争の停戦のための尽力への期待も述べた。
トランプ1.0と対峙したEUの執行機関・欧州委員会のユンカー前委員長は、トランプ大統領は「EUは米国に対抗するためのヨーロッパ人の発明」であり「常に敵」と考えていたと述べている*。
*UK can rejoin EU ‘in a century or 2,’ Juncker says POLITICO
EUを米国の挑戦と見るトランプ大統領が、ユーロを基軸通貨ドルへの挑戦と見ても不思議ではない。
安全保障体制での自立性の向上、競争力の回復のための構造改革に加えて、銀行同盟の完成や資本市場同盟の加速などによるユーロ制度の更なるバージョンアップも、トランプ2.0の世界に対応するEUにとって優先度の高い課題となっている。
米欧間の乖離の拡大は、西側の一角を占める日本にとって「漁夫の利」を得る機会というよりは、憂慮すべき事態と言え、注視する必要があると思われる。
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