(写真はイメージです/PIXTA)

連日ニュースを賑わせている某テレビ局不祥事問題。現在は第三者委員会が局内で類似の事案があったかどうか調査中と報道されていますが、問題発覚当初は、第三者委員会ではなく内部調査委員会を設置するとしていました。この内部調査委員会と第三者委員会の違いはどこにあるのでしょうか。本稿では、ニッセイ基礎研究所の松澤登氏が、両者の相違について詳しく解説します。

内部調査委員会と第三者委員会の違い

昨今、SNSを見ると某テレビ局の不祥事と疑われるもの(以下「本案件」)の話題一色となっている。某テレビ局が最初に社長会見を行った際は、参加できる報道機関や取材方法を制限するなどしたことで、批判も多かった。

 

ところで筆者が特に気になったのが、本案件調査を行うのが、最初の会見では「第三者の弁護士を中心とした調査委員会」であると報道された*点である。

*NHK https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250118/k10014696511000.html 参照。

(その後2025年2月7日現在、「第三者委員会により調査中」と報道されている)

 

最初の会見で第三者委員会と言わなかったのは、日本弁護士連合会のガイドライン*(以下、ガイドライン)の第三者委員会に該当しないからとのことのようだが、そうするとこれはいわゆる内部調査委員会(または社内調査委員会)であって、ただ、弁護士等独立の第三者が主要メンバーとなるものと推察される。

*https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/opinion/report/data/100715_2.pdf 参照。

 

ここでは第三者委員会とは何か、内部調査委員会とはどう違うかについて解説を行う。

 

第三者委員会のポイントを2つ挙げる。まずは「誰のために」調査を行い、結果報告を行うのかという点である。ガイドラインでは「すべてのステークホルダー*のために調査を実施」すると記載されている(前文)。

*本案件では株主、スポンサーひいては視聴者・消費者などが該当する。

 

そして企業等では、「調査報告書を、原則として遅滞なく」ステークホルダーに対して開示する(第2部第1.2.まる1)こととされ、かつ上場企業では「記者発表、ホームページによる全面開示が原則」とされている(注6)*。

*もちろん第三者委員会でもプライバシーに配慮して非公表部分が生ずるのはやむを得ないことである。

 

他方、内部調査委員会方式では、このような縛りはなく、会社、もっと端的に言えば、社長又は取締役会のために調査を行い、その結果を社長等に報告するものであるといえる*。

*なお、内部調査委員会では不祥事に関与した役職員の法的追及が含まれることがある(國廣正ほか「不祥事調査の実務」(ジュリスト2016年10月号)p55参照)。この点について、本事案でどのようなスタンスで臨むかの説明はなかったようだ。

 

そして報告書全体を公表するかどうか、どの部分を開示するかは企業の判断によることとなる。

 

次に「委員会の構成員」である。ガイドラインでは第三者委員会は「企業等から独立した委員のみをもって構成され」る(第1部前文)としている。この点に関連して、「企業等と利害関係を有する者は委員に就任することができない」(第2部第2.5.)とされ、また「第三者委員会は調査報告書提出前に、その全部または一部を企業等に開示しない」(第2部第2.3.)としている。すなわち、報告書の内容は独立した者だけで構成される第三者委員会がその権限において作成し、報告書の内容には調査対象企業は一切口をはさむことができない。

 

また、第三者委員会の委員である弁護士の報酬は成功報酬ではなく、客観的な時間制(タイムチャージ)とされている(第2部第6.2.)。この様に徹底して企業と委員の利害相反を排除する仕組みになっている。社内者が入れば、社内事情に詳しく、かつ役職員からの調査協力を得やすいとの考えもあろうが、隠蔽や報告書の内容の誘導もできてしまう難点があり、結果報告発表時にステークホルダーに納得を得られない原因ともなる。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2025年1月24日に公開したレポートを転載したものです。

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