日本の経済活動の基盤となってきた「不動産」
すぐにでも廃業して不動産を売却しなければならない状態ではなく、数年以内に売却できればいいというような余裕がある場合は、「売り時」の見極めが高値売却のキーポイントとなります。
日本の地価は第二次大戦後から1990年代初頭のバブル期まで、長く右肩上がりで推移してきました。人口が増加し経済が活性化する中で、実需に基づいて堅実に値上がりしてきたのです。
個人にとっても経営者や金融機関にとっても、不動産は持っているだけで資産価値が上がる非常に信頼性の高い資産とみなされ経済活動の基盤となりました。そのもっとも象徴的な例は金融機関における与信です。
海外の金融機関は融資に際して事業の見通しや経営者の資質を重視しますが、日本の金融機関が重視するのは担保となる不動産や土地の価値です。不動産や土地の担保価値さえあれば、返済能力に疑問符がつく事業であってもほとんどの金融機関は融資をしてくれます。このため、日本の経済は金本位制ならぬ「土地本位制」と呼ばれるほどです。
売り時の「到来」を待つことも選択肢のひとつ
ところがバブル崩壊以降、土地は右肩上がりで価値が上昇していくという「土地神話」は消滅しました。【図表】を見れば一目瞭然ですが、三大都市圏の地価平均は1991年にピークを迎えた後、急坂を転げ落ちるように下落しています。
近年はアベノミクス効果もあってか、短期的にはようやくその下落傾向に一定の歯止めがかかり、場所によっては地価の上昇が報告されるようになりました。不動産を高値で売却するなら、こうした小さなピークが訪れるのを待って、好機を逃さずに売却することが非常に重要です。
多くの経営者はそのことを知っているものの、経営状況によっては「そこまで待てない」というのが本音でしょう。キャッシュフローの状況や金融機関との関係、資産状況など、経営者の事情はそれぞれ違うため端的なアドバイスはできませんが、金融機関との話し合いや保証協会の利用などで事業を維持できるのであれば、「売り時」の到来を待つこともメリットの大きい選択肢と言えます。
【図表 三大都市のおける地価変動率の推移】