両親の虐待から逃げ込んだのは歌舞伎町
モカさんの両親は、離婚・再婚を繰り返し、彼女の父親や母親はその都度替わっている。母親が最初に結婚した男性との間にモカさんのお兄さんが産まれた。その後、二人は離婚。お兄さんを連れた母親は別の男性と再婚し、その再婚相手との間にモカさんが産まれた。
そして再び母親は離婚することになり、モカさんとお兄さんは今度は父親の方についていった。この時点でお兄さんと父親の間に血の繋がりはなくなっている。さらにその父親が別の女性と再婚し、またもや離婚。この時はモカさんだけが母親に連れられ、お兄さんは家を出ていった。その母親がさらに再婚し、現在に至る。よって、モカさんと現在の両親との間に血の繋がりはない。
あまりにも複雑すぎる家庭環境。この話をしながら、モカさんは笑っていた。その表情は、自分の生い立ちに呆れているようにも見えたし、「私ってめんどくさいでしょ?」と訴えかけるような自虐的な笑みにも見えた。
彼女は今まで幾度となく、他人に自分の境遇を話してきたのだろう。この話を打ち明ける時、耳を傾ける相手には血の繋がった本当の両親がいて、温かい食事や温かい布団があって、というケースも多かったのではないだろうか。
ちょうどこの時の僕と同じように、モカさんの話に相槌を打つのが精一杯、という引きつったような相手の表情を、彼女は何度も見てきたのだろう。そのたびに「あなたは普通じゃない」と突きつけられたような、あるいは「かわいそうだね」と同情されたような、そんな気持ちを15歳の少女が抱いたとしても不思議ではない。自分の生い立ちを話すモカさんの笑顔は、僕にそう思わせた。それほどに、15歳とは思えない悟りきった笑顔だった。
そんな特殊な環境の中で育ったモカさんにとって、同じ境遇でともに育ったお兄さんだけが唯一の理解者であり、拠り所であったようだ。
「お兄ちゃんと私はお父さんが違うんです」
「お兄ちゃんが家を出たのは15歳。今の私とちょうど同じ歳でした」
モカさんはたびたびお兄さんを引き合いに出しながら、自分の過去を語っていった。彼女が歌舞伎町に通うようになったのも、お兄さんがいたからだという。
「私、両親は嫌いだけど、お兄ちゃんだけはすごい好きだったから、お兄ちゃんのいる歌舞伎町に行こうと思ったんです」
血の繋がりがない両親との生活は想像を絶するものだった。彼女は両親から毎日のように虐待を受けていた。そんな両親から逃げるように初めて千葉の実家を飛び出したのは10歳、小学4年生の頃。モカさんが向かった先はお兄さんのいる歌舞伎町だった。
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