クリニックの3つの分類
まず、クリニックの分類についてお伝えします。現状、在宅医療に携わる医師の約7割が個人開業医となっています。診療範囲は「外来診療と在宅医療」あるいは「在宅医療のみ」のいずれかのケースです。
そのなかで、医師1人体制のクリニックが約7割、残りの3割は医師の複数名体制といわれています。
医師が複数名いるメリットは、医師1人あたりの負担を軽減できる点です。夜の当番や週末の診療を交代制にして、24時間365日患者さんのニーズに対応することができます。非常勤医師を雇うという選択肢もあります。ですが、常勤医師が複数名いることは行き届いた診療を提供するうえで必要なことに思えます。
医師1名では満足に休みが取れずに疲弊していき、いつでも即時対応するのが難しいというのが現実です。
メリットを挙げるならば、医師と患者さんが強い絆で結ばれるという点です。地域からの信頼も厚く「◯◯先生がいてくれて本当によかった」と感謝されます。患者さんにしてみても、どんなときでも同じ医師に診てもらえるというのは、心の安らぎが得られるというメリットがあります。
このような医師は1人ひとりの患者さんと深く関わるため、数多くの患者さんを担当することは難しい傾向にあります。
ですが、クリニックを開業する医師には大きく3つのパターンがあります。
1つ目は、1人で在宅診療を行うパターンです。自分の生活を犠牲にして、やりがいに満ちた密度の濃い医療に携わることができる点が挙げられます。1人で訪問診療を行う醍醐味といえるでしょう。
2つ目のパターンは、基本的に外来診療を行い、昼休みや外来が終わった夕方に訪問診療を行うというスタイルです。外来で診ていた患者さんが在宅医療に移行した際に引き続き受け持つことになったのがきっかけで……という流れが多いかと思います。
そのため在宅医療で多くの患者さんを診ることは難しく、外来のすきま時間を活用して訪問するため、医師側の負担は甚大です。
患者さんにとっては、今まで外来で診てくれていた先生に引き続き診てもらえるので安心もでき、うれしい方も多いでしょう。
3つ目のパターンは、医師が複数名いるクリニックです。先述のとおりシフトや役割分担ができます。そのため1人の患者さんとの強い絆といったものは比較的希薄です。医師はしっかりと休みも取れるため、経営としても持続可能性が高くなります。
たとえば、医師の1人が退職したとしても他の医師がフォローできる体制があることは患者さんにとっても安心材料になります。もし、在籍するたった1人の医師が体調を壊したり、お亡くなりになったりしたら、その先生が診ていた患者さんは路頭に迷ってしまいかねません。
野末 睦
医師、医療法人 あい友会 理事長