(画像はイメージです/PIXTA)

在宅診療クリニックでは、総合病院とはまた違ったクレーム事例が生まれる傾向があります。在宅診療医の野末睦氏は、こういった理不尽な要求やカスハラを防ぐためには「在宅診療という医療サービスへの理解の浸透が必要」と語ります。在宅診療クリニックへのクレーム事例を解説します。

「24時間365日対応」の看板を見てクレームに発展

商品やサービスを提供する職場では、理不尽な要求をする顧客に遭遇することがあるかと思います。在宅医療も例外ではありません。たとえば、在宅医療ならではといえるのが、「在宅医療がどういうサービスか」をご理解いただいていないことに起因するものです。

 

私たち含め多くの訪問クリニックでは、同意した患者さんと「訪問契約」を結んでからサービスの提供が始まります。つまり、契約を締結した患者さんしか往診しません。言うまでもなく、医療者と患者が互いに齟齬なく信頼し合って診療を進めていくために、契約締結はとても大切です。契約書には介護保険サービスが提供されることや、診療情報の取り扱いについてなどが記載されています。

 

私たちのクリニックは24時間365日対応ですが、対象となるのは契約を結んだ患者さんのみです。

 

ところが、看板や公式ウェブサイトに記されている「24時間365日対応」の文字のみを見て「今日は熱があるから、ちょっと診てほしい」というような電話がかかってくることがあります。「だって24時間365日対応でしょ」と言われても、契約を結んでいない患者さんを診ることはできません。その旨をご説明してお断りすると「なんだよそれ、看板に偽りありじゃねえか」という謂れ無いクレームに発展することもあります。

在宅医療の理解促進は急務

想像してみてください。仮に人口22万人の都市で、在宅医療クリニックが1院、在籍している医師が5人、契約している患者さんは1,250名だとします。夜の当直を担当する医師は1人。

 

契約してない患者さんから次々に電話かかってきたら、診療体制は破綻してしまいます。公式ウェブサイトでは「契約した患者さんのみ、24時間365日対応します」と掲載し、一般の方へ理解が促進されるよう工夫しています。実際のところ、なかなか浸透しないというのが現状です。

 

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