(画像はイメージです/PIXTA)

在宅診療を受ける患者には2種類に大別されます。自宅に住んでいる患者と、高齢者施設に入所している患者です。昨今は少子高齢化により高齢者施設の数が増しているため、メインターゲットに据えるクリニックの数も増えているようです。しかし、効率の観点だけでメインターゲットを選ぶことは早計です。在宅診療医の野末睦氏が永続性の高い、在宅診療クリニックの経営について解説します。

現在は6~7割の患者が「消去法」で在宅医療を選択

病院でできる治療が尽き果てた末に「退院してください」と言われるも、転院先も入居先もない。そうした状況のなか医師から「自宅に往診に来てくれる先生を紹介するので、ご自宅で過ごされてはいかがでしょうか」と提案される――かつての在宅医療の位置づけは、このように苦渋の策として登場する選択肢でした。

 

徐々に変化しつつあるものの、現状においても6~7割の患者さんが「病院に見捨てられたから」というのをきっかけに在宅診療を選ばれている印象です。残りの3~4割に「自宅で死にたいから」といった積極的な理由で選ばれている人がいるといった状況です。

 

こうした状況は嘆かわしく、変えていきたいと考えています。在宅医療に対する正しい理解が一般に広まることで、日本人はもっと最期の過ごし方を自由に選べるようになるのではないでしょうか。在宅医療は最期を自分らしく迎えるため、納得して死に向かうための手段であり確立された専門医療であると知っていただきたいと思います。

在宅医療には「個人宅」と「施設」の2種類がある

専門的な医療と認識してもらうためには、これから在宅診療クリニックを開業される皆様が安定的かつ継続的な経営をしていく必要があります。

 

クリニックを経営するにあたり、早い段階で決めておくべきことを在宅医療の現状と併せてお伝えします。

 

まず、在宅診療を受ける患者さんには2種類あります。ご自宅に住んで療養している個人宅の患者さんと、高齢者施設に入所している患者さんです。どちらをメインターゲット層に診ていくかで留意点は大きく異なります。ここでは経営的な視点で考えてみましょう。

 

私たちの医療法人グループでは個人宅が3割、高齢者施設が7割です。ここでポイントとなるのは、個人宅と比べて高齢者施設における担当患者は、減りにくいという点です。

 

たとえば、とある施設に入居している患者さんを看取ったとします。空いたベッドには、また別の人が入居します。30人が入居できる施設の全員を担当しているのであれば、入居者は入れ替わりつつ患者数は一定に保たれます。一方で、担当する施設を増やすことは容易ではありません。新規参入したいクリニックは、既存の担当クリニックよりも施設との信頼関係を高めなければ選ばれることはありません。競合クリニックが多ければ、施設患者数は増えていきません。

 

こうした特徴は新しく受け持つ新患数にも影響します。個人宅が3割、高齢者施設が7割という割合でも、毎月の新患数は個人宅が半分、施設が半分です。個人宅と比べると施設は回転率が低いため、個人宅よりも施設の方が、より少しずつ増えていくパターンが多くなります。

 

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