母と楽しく暮らすお気楽な姉
Aさんは姉と2人姉妹。Aさんの父は小さいながらも製造業の社長で、事業承継ののち、老後はのんびりと暮らそうと考えていました。しかし引退した矢先に心筋梗塞で倒れ、73歳で亡くなりました。
父には億を超える遺産があり、Aさんはどのように相続すべきかを姉と相談しました。日本人女性の平均寿命が87.14歳(厚生労働省の「簡易生命表(令和5年)」)であることを考えると、72歳の母にとってはあと15年以上。のちに介護が必要になったり、施設に入所したりする可能性を考え、母に父の遺産のほとんどを相続させることにしました。
相続時の配偶者の税額軽減(配偶者控除)では、正味の遺産額が1億6,000万円まで、もしくは配偶者の法定相続分相当額までであれば、配偶者には相続税はかかりません(配偶者控除を受けるためには、相続税の申告書の提出が必要)。
Aさんは結婚し、母と離れて暮らしています。一方姉は独身で母と同居しているため、父が亡くなったあと2人で暮らしていました。母の年金収入は老齢基礎年金と父の遺族年金で月17万円。贅沢をしなければ、年金のみで賄うことができるでしょう。
姉は最初の子どもだからと大切に育てられ、何度か働きに出ても長続きせず、45歳を過ぎても、親のすねをかじっているようです。
姉には何度か「自立しないと。親が亡くなったらどうするの?」と働くよう勧めましたが、わがままな姉は「親が亡くなったら働こうかな」と冗談交じりに笑って話をしていました。
母も姉には甘いところがあり、「この先、自分に介護が必要になったとき、姉がすべて面倒をみてくれるから心配しないで」と、定職につくまで母は姉に月3万円のお小遣いを渡していました。
Aさんは離れて暮らしていたため、日々の生活に忙しく、頻繁に連絡することもありませんでした。最低年2回、実家である母の家を訪れては「元気にしているから心配しないで」と、姉と旅行に行ってきたことなど話を聞きました。2人で楽しく過ごしているようです。
心配なのは、姉が相変わらず定職についていないようで、旅行や買い物は母におんぶにだっことなっていること。Aさんは50歳を過ぎた姉に呆れ、実家を訪れた際には「姉に必要以上にお小遣いをあげないで」と頼んでいました。
父が亡くなってから15年後、母も平均寿命の年になり、足腰が弱くなってきたのに加えて、少し認知症がはじまったような兆しがありました。それでも施設に入るまでには至らず、姉と2人で生活していました。
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