20年間に祖母が消費したものは?
祖母は専業主婦でしたので、祖父が亡くなったあとは年金が主な収入でした。けれども祖母1人が生活する分には、それだけでも十分な金額でしょう。
大きな出費だと思われたのは、自宅の建て替えです。祖父から相続した自宅は50年前に建てられたものだったので、相続後祖母が二世帯住宅に建て替えています。借り入れはないため、現金で建てたようですが、祖母と叔母家(夫婦と子供2人)が住む4LDKの家で、5,000万円程度だと想定されますので、少なくとも4億円以上は財産として残っていていいはずです。
ところが今回、祖母の財産を確認すると不動産は自宅のみで変わらず、金融資産は2億円程度で、どうも少なすぎるといいます。
消えた2億円の行方は?
祖母は5億円を相続しており、家の建て直し費用は5000万円程度と想定され、本来は4億5,000万円の財産が残っていてもいい計算になります。ところが現在確認できているのは2億5,000万円。金融資産が2億円も少なくなっているということになります。
残っていないということは祖母が消費した可能性もありますが、それは不動産など他の資産としては残っていないため、何を購入したかわかる証拠がありません。
贈与も疑われますが、大きなお金の動きがあれば、亡くなったときに残っていなくても引き出された預金は相続財産として加算して、相続税を納めることになっているはずです。
法定相続人に3年以内に贈与があった場合、相続財産に加算される
預金から引き出された現金は、本人が消費したということでなければ、贈与されたものとみなしますが、相続になる前の3年分は法定相続人に贈与されたものであれば相続財産に加算する必要があります。
2024年1月1日からは相続前7年間に遡るという内容に改正されましたが、2026年12月31日の相続までは3年が適用、その後、7年が適用されることになります。
壱成さんの祖母は2024年に亡くなっていますので、贈与として加算するのは相続になる前の3年間でよいということになります。
預金は3年~7年の動きを調べる
相続税の申告が必要な場合、預金は口座ごとに残高証明書を取得して証明していきますが、残高に含まれていない、すでに引き出されたり、贈与されたりした財産も相続前3年間は加える必要があります。
相続税の税務調査は、亡くなった人の預金口座から、子どもや孫の口座に移されていることを調べ上げて、追徴課税をするために行われることが大半だといわれています。
壱成さんの祖父が財産の半分が祖母に相続されたことは明らかですので、税務署は財産のもとを把握しているというえことになります。
相続税の申告をする場合は、税務調査にならないように、事前に亡くなった人の預金口座は少なくとも3年、できれば5年から7年は通帳や取引明細をもとに入出金を確認していきます。
生活費の消費程度であれば問題がないところですが、まとまった金額が引き出されている場合や、他の口座に移されている場合は、相続財産として申告しておくことで税務調査は避けられるのです。