法定相続人以外が「相続」することもある
身内がいない、つまり法定相続人がいない人が亡くなった場合、相続財産は国に回収されます。
都会では孤独死が増えており、死後何日か経って死んでいるのがわかるということが頻繁に新聞記事になっています。そのため町内会で一人暮らしの人に定期的に巡回を行っているところもあります。
身寄りのない人が亡くなると、つまり法定相続人がいないと、その人の利害関係者か検察官が家庭裁判所に申し立て、相続財産管理人を選任してもらうことになります。管理人は故人の財産債務を整理して、残った金銭を国庫に納めます。
信じ難い話かもしれませんが、アメリカでは亡くなる間際の2ヵ月間看病をした看護師が全財産をもらったケースがあります。このような制度は日本にも同様に存在し、「特別縁故者」という制度です。籍を入れていない内縁の方は特別縁故者に該当するのですが、実は内縁関係になくても一緒に暮らしていた方や、看護をしていた方が特別縁故者として、故人の遺産を受け取ることができます。
また個人でなく、養護施設が受け取った事例もあります。高裁の判決で、長年知的障害者で、その者を35年間面倒をみた障害者支援施設が相続財産を受け取ったことがありました。
相続人なき遺産1,000億円に到達
実は、「相続人なき遺産」の額は毎年、過去最高額を更新しており、20年前は107億円、10年前は332億円、2022年度には768億円に上りました。
このようなことが起こっている背景として、少子高齢化は挙げられます。昨今出生率は80万人を割りました。そもそも、婚姻数は毎年60万組程度。未婚率は大幅に上昇しています。参考までに団塊の世代と比較しておくと、出生率はおよそ1/3ほど、婚姻数は当時100万組を超えていたというので、身寄りのいない人が急増しているのも納得でしょう。
そのため数年先には相続人のなき遺産の額は1,000億円に到達するといいます。
特別縁故者を悪用される可能性は高まっていく
子や孫もおらず、相続されることのない遺産を抱えた富裕老人はこの先も増えていくでしょう。そんななか、気がかりなのが、特別縁故者の制度です。
先ほども述べたように、特別縁故者は認められてしまえば、内縁である必要はありません。その禁忌を超えてしまう人物が現れる可能性は十分にありうるのです。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾