ドイツでは有事の際は国が「土地」を自由に使える
誰の土地かわからない、所有者不明土地の面積が九州全土より多いとされています。なぜそんなに所有者不明土地が増えているのでしょうか。
それは、土地の所有者が死んで、次の所有者になるべき相続人が登記せずほったらかし状態であるからです。
その土地が誰のものかを知りたいとき、「登記簿謄本」を調べます。登記簿謄本にはその土地の所有者や詳しい情報が載せられています。
もし土地を受け取ったらその土地の登記簿謄本に持ち主の名前を記名、「登記」する必要があります。
ところが、日本には所有者が登記されていない土地、いわゆる所有者不明の土地が多く存在しているわけです。
土地がどのように扱われるのかは国によって異なります。
ドイツでは土地は元々国のものであるという考え方があるため、有事の際は国が使用収益することができます。
これに対して日本はこのような土地を活用して道路を敷いたり、建物を建てたりすることができません。誰のものだかわからない土地がずっと放置されることになります。
相続人が登記しない2つの原因
新しい教科書、上履き、体操服など。小学校で受け取ったら真っ先に名前を書かされた経験のある方も多いのではないでしょうか?
にもかかわらず、なぜか名前の書かれていない土地がこんなに多く存在しています。
その理由は、元々の所有者が亡くなったときに、相続人が登記せずにほったらかしにしたことです。ほったらかしにせざるを得ない原因は主に2つです。
1つは遺産分割で揉めている場合、もう1つは相続人が誰も引き取りたがらない場合です。
3年以内に登記しないと10万円以下の罰金
このような状況を受け、令和6年4月1日より相続登記義務化に関する新しい法律が施行されました。
実はそれ以前は相続登記を義務付けるような法律は存在しませんでした。今回の法改正によって相続取得から3年以内に所有権の登記をしない場合10万円以下の罰金が発生します。
また、所有者不明の土地を、円滑に利用できるようにする財産管理制度を設けたり、令和5年4月1日には係争中のものを除いて、相続にタイムリミットが設けられたり、と法の見直しが行われています(民法904の3)※1。
※1 これにより相続開始後10年経過した場合、具体的相続分ではなく、法定相続によって相続されることになりました。
まだまだ制度を見直す必要がある
はたして、これらの法改正によって所有者不明土地は減少するのでしょうか?
罰金は設けられることになりましたが、たかだか5万円や10万円以下であっては現実的には機能しないと思います。
やはりドイツのように、国が土地を扱えるようにする法整備を進めなければ無理だと思います。たとえば、相続後10年経った未登記の土地は国が没収するなどです。
今回の法改正はお役所仕事感が免れません。今のままでは、さらに所有者不明土地や空き家は増加していくと思います。
税理士法人奥村会計事務所 代表
奥村眞吾