何かと税金について考える年末。日本と全然違う相続事情…アメリカの富裕層がやっている「最もシンプルな相続税対策」

何かと税金について考える年末。日本と全然違う相続事情…アメリカの富裕層がやっている「最もシンプルな相続税対策」
(画像はイメージです/PIXTA)

ふるさと納税や年末調整……。年末は何かと税金について考えさせられます。今回はそんな年末に関するアメリカと日本の税制の違いを紹介します。アメリカと日本では税制が大きく異なり、特に所得税や相続税に関しては日本が重いとされています。そのうえでアメリカでも相続税対策は行われているといいますが、一体どのような対策が取られているのでしょうか。

アメリカの富裕層が年末に必ず行うこと

かなり前にはなりますが、アメリカの雑誌でアメリカ人富裕層が年末に必ず行う儀式についての記事が掲載されていました。

 

その儀式とは、小切手を郵送したり、クリスマスプレゼントのなかに入れたり、「529教育資金プラン(内国歳入法 529 条に基づき連邦税制上の優遇措置 が付与された、高等教育資金積立制度)」やトラストに送金することだと書いてありました。

 

これは、1万5,000ドルの非課税枠を活用して、毎年ファミリーメンバーに贈与を行っているということです。実はこの方法はアメリカ人富裕層の間では、親の財産を子どもや孫へ移す最も簡単な方法として利用されています。

 

日本でも110万円の控除枠を活用して贈与を行っている方はいます。

 

ここでアメリカと日本で異なるのは、納税を行うのが贈与者ということです。アメリカでは1万5,000ドルまで非課税なので、夫婦であれば1人の子どもに対し毎年3万ドル(およそ450万円)まで非課税で贈与を行うことができます。

日本よりはるかに大きいアメリカの相続税非課税枠

多くのアメリカ人にとって高額な相続税非課税枠がある現在、贈与税や相続税について心配する必要がありません。

 

以前は違いました。日本と同様にアメリカの富裕層も相続財産をどう減らすかということに主眼を置かれていました。そのために非課税枠を利用した生前贈与が一番簡単な対策として利用されていました。

 

しかしその後、相続税の非課税枠が徐々に大きくなりました。

 

2009年には非課税枠は350万ドル、最高税率は45%からさらに拡大され、2017年にはTax  Custand  Jobs  Act(TCJA)によって、未婚者の相続税非課税枠が1,158万ドル、既婚者で2,316万(およそ35億円)ドルまで拡大され最高税率は40%まで下がりました。

 

日本が4,800円(3,000万円+600万円×法廷相続人数)であることを考えてみると、大きな差です。

 

これは一般的なアメリカ人であれば相続税や贈与税について心配する必要がないレベルです。実際にTax Policy Centerによると、2001年での相続税申告書提出数が5万500件あったものが、2018年にはわずか1,900件まで減少していると報告されています。

非課税枠が2025年でなくなる

では、なぜこのような状況で非課税枠を活用した贈与が行われているのでしょうか? 

 

実はこの高額な相続税非課税枠は2025年までの時限立法によって設定されています。つまり、その後はTCJA発行前の非課税枠500万ドル(+インフレ率)に戻ります。

 

また当時は大統領選前であり、もし民主党が勝利した場合には2025年を待たずして非課税枠が縮小する可能性もありました。このような理由から現在の税務環境にこだわらず、富裕層は粛々と毎年、贈与を行っていたのです。

 

2025年以降、どうなるか注目ではりますが、少なくともこの生前贈与については、富裕層の間で最も確実で簡単な方法として活用されていくことでしょう。

 

税理士法人奥村会計事務所 代表

奥村眞吾

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