評価額1,000万円の実家は兄に…「でも、介護は女の子のあなたがお願いね」と悪びれもなく言い放つ母。地元・九州で親の面倒を一身に引き受けてきた〈55歳女性〉がついに家族を見切ったワケ【CFPの助言】

評価額1,000万円の実家は兄に…「でも、介護は女の子のあなたがお願いね」と悪びれもなく言い放つ母。地元・九州で親の面倒を一身に引き受けてきた〈55歳女性〉がついに家族を見切ったワケ【CFPの助言】
(※写真はイメージです/PIXTA)

美保さん(55歳)は1度結婚したものの離婚し、1人で暮らしています。そんなとき、父親が亡くなり、離れて暮らしている兄との財産分与に不満を感じずにはいられませんでした。今回は、CFPなどの資格を持つトータルマネーコンサルタントの新井智美さんが、相続の際の財産分与について解説します。

父が亡くなった時点できちんと財産分与を行うべき

父は、財産全てを平等に分けてほしいと考えていましたが、実際に家の評価額を調べることはしていませんでした。美保さんが慌てて家の評価額を調べたところ、1,000万円ほどでした。本来なら家の評価額も含めて法定相続分に沿って分けることで、子どもたちの受け取る金融資産は母よりも多くなったはずです。

 

しかし、母にはそんな考えはなく、兄の孝政さんに家を譲り、孝政さんの孫に財産を残すことを優先しています。

 

美保さんは最終的には兄と平等に財産が残るようにしてほしいという思いで、これまでの介護生活について話し、自分がどれだけ辛かったか、また仕事の両立が難しかったかを話しましたが、「女の子なんだから親の介護をするのは当たり前でしょう」の一言で片づけられてしまいました。

 

美保さんには子どもがおらず、母としてはかわいい孫がいる兄のほうに財産を残したいと考えたのでしょう。母は「孝政は昔から手がかかる子だった。家庭を持ってやっと安心した。孫もこれからお金がかかるから少しでも孝政の力になりたい。美保は一人でもやっていける子だもんね」と悪びれもなく言うのです。「私がいい子だったのはお母さんに少しでも褒めてもらいたかったのに……」思わず美保さんがこれまで抑えていた気持ちが溢れてきました。

 

財産の分け方は遺産分割協議で決めますが、兄は母の意見に賛成し、美保さんの立場は弱いままです。反論しても聞き入れてくれるはずがありません。それどころか、「マンションもあるくせに親の財産を頼るなんて厚かましい」と言われるばかりです。

 

極めつけは今年のお正月でした。年末に大阪から家族で帰省してきた兄一家をここぞとばかりもてなす母。兄一家が滞在している期間は美保さんも手伝いに駆り出され、台所にいる時間のほうがずっと長かったと言います。ようやく兄一家が帰った後、一息ついた美保さんは「この家族に何を言っても無駄だ」と諦め、相続についても親が言う通り、わずかな金額を相続しました。

 

財産分与で揉めたこともあり、その後母親や兄からは距離を置かれることに。独り身だからこそ、病気などで何かあったときには兄を頼りたいという気持ちもすっかり冷めてしまいました。

 

相続財産に不動産が含まれている場合、このように財産分与が複雑になるケースは少なくありません。身内が遺産相続でいがみあうのは見たくないものですが、相続が争族に発展するケースも多く、家族という絆も失われてしまいます。

 

遺産相続について、生きているうちに話し合うのは難しいですが、自分の気持ちをきちんと書き記しておくことは大切です。もちろんエンディングノートを活用してもいいですが、エンディングノートには法的効力はありません。

 

自分の財産を残された人にどう分けるか、それも不満が出ないようにする方法を考えるのは難しいですが、できれば弁護士などに相談し、遺言書などで遺しておくようにしましょう。

 

また、夫婦ともに健在の間にどのように財産を残すか話し合っておくことも大切です。そのうえで、できれば子どもたちにもその内容を伝えておくようにしましょう。子どもたちも事前に知ることで、実際に相続が発生した時に揉めることもなくなります。

 

 

新井智美

トータルマネーコンサルタント

CFP

 

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