トランプ氏の勝利後、米ドル/円「1ドル156円」まで円安も…3年連続で「年末にかけての米ドル安・円高」の現実味【国際金融アナリストが考察】

12月の「FX投資戦略」ポイント

トランプ氏の勝利後、米ドル/円「1ドル156円」まで円安も…3年連続で「年末にかけての米ドル安・円高」の現実味【国際金融アナリストが考察】
(※画像はイメージです/PIXTA)

米大統領選挙を迎えた11月の「米ドル/円」。156円まで一段高となった一方、月末には150円割れとなるなど、大きな変動を見せました。そして12月は、3年連続の「米ドル安・円高」となる可能性がある、とマネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏はいいます。その根拠とともに、今週の米ドル/円の展開予測をみていきましょう。

12月の注目点=3年連続で「円高の12月」となるか

11月の米ドル/円は、結果的に陰線(米ドル安・円高)となりました。過去2年間でも同様の傾向を見せており、12月まで続いています。

 

出所:マネックストレーダーFX
[図表4]米ドル/円の月足チャート(2020年~) 出所:マネックストレーダーFX

 

では、この12月も3年連続の陰線となるでしょうか? 米ドル/円は先週、10月中旬以来約1ヵ月半ぶりに52週MA(移動平均線)を割り込みました(図表5参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表5]米ドル/円と52週MA(2000年~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

このように、52週MAを上回る動きが長く続かなかったことは、米ドル/円の上昇は一時的に過ぎず、継続的な動きである「トレンド」は下落に向かっている可能性が高いというのが経験則の示すところになります。

 

以上から、12月以降も米ドル/円は下落が続く可能性が高いといえます。では、どのようなメカニズムで米ドル/円の下落は続いていくのでしょうか。

 

上述のように、12月は過去2年連続で米ドル安・円高となりましたが、その主因は米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いが続いたことと考えられました。しかし、今回は別の要因があるようです。

 

CFTC統計による投機筋の円ポジションは、11月末の段階で2023年は10万枚、2022年も6万枚以上と比較的大幅な売り越しとなっていました。この米ドル買い・円売りに傾斜したポジションの取り崩し(米ドル売り・円買い)が、11月に続き12月も米ドル安・円高をもたらした大きな要因と考えられました。

 

しかし、すでに見てきたように、足下の円ポジションはすでに大きく縮小したとみられるため、過去2年に比べると米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いがさらなる米ドル安・円高をもたらす影響は限られそうです。米ドル/円の下落が12月も続くためには、米金利がさらに低下し、日米金利差の「米ドル優位・円劣位」が一段と縮小することなどが必要といえます。

 

12月は日米の金融政策決定会合が予定されています。日銀は追加利上げ観測もありますが、FOMC(米連邦公開市場委員会)が3回連続利下げに動くのかなどを見極めながら、日米金利差の「米ドル優位・円劣位」が一段と縮小に向かうかどうかが、3年連続の12月の米ドル安・円高となるかの目安ではないでしょうか。

 

米10年債利回りは、トランプ氏の選挙公約を織り込むことなどにより、9月の3.6%から一時4.5%程度まで1%近く上昇しました。その反動で4%程度まで米10年債利回りが低下するようなら、これまでの関係からすると、米ドル/円は145円程度まで下落する見通しになります。以上を踏まえ、12月の米ドル/円の予想レンジは145~152円で想定します。

12/2~12/6の予想=米雇用統計発表などに注目

先週の米ドル/円は、テクニカルに重要な分岐点の可能性がある200日MAの152円や120日MAの151円を割り込むと一段安となりました。その意味では、今週は反発してもこれらの水準を大きく上回るのは難しい可能性があります。

 

今週は12月の第1週ということで、雇用統計など注目度の高い米経済指標発表が多く予定されています。特に雇用統計の結果は、12月FOMCで3回連続利下げになるかを考えるうえで重要な手掛かりになりそうです。3回連続利下げの可能性があるなら、それを手掛かりに米金利は低下が続くことも考えられます。

 

以上を踏まえると、今週の米ドル/円の予想レンジは、147~152円で想定します。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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