築70年の実家にお住いの恒夫さん。ついにお風呂が使えなくなってしまい工事費の見積もりを頼んだところ、200万円かかるだけでなくほかの場所もリフォームが必要になることは目に見えています。いっそのこと建て替えか住み替えをしようかと悩み、お兄さんと一緒に相談に訪れました。本記事では、相続した家の売却や資産組替ついて、相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が解説します。
空き家になった自宅、これからどうする?
ようやく母親の1周忌も終わり、相続税の申告や名義替えができたことで、恒夫さんはあらためて「相続した実家をどうにかしなくては」と考えました。
選択肢はいくつかありますが、主には次の3つになります。
1.建築費を借入して自宅を建て替える
2.半分売って売れたお金を建築費にして、建て替える
3.売却して売れたお金で住替える
それぞれのメリット、デメリットがありますので、それぞれを整理すると次のようになります。恒夫さんが相続されたご実家は都内なので、参考価格は周辺の事例より提要しています。
1.建築費を借入して自宅を建て替える…土地を残したい場合
【メリット】
55坪の土地には110坪の建物が建てられます。おひとりさまが住む家には広すぎるため、20坪を自宅として90坪を賃貸する賃貸併用住宅を建てることを想定します。
坪単価が100万円の木造建物を建てると1億円の建築費がかかります。建築費は総額を借り入れで調達すると、期間35年として月306,184円を返済する必要がありますが、家賃収入から返済できる事業計画は立てられます。
・家賃収入想定 100,000円×7室=700,000円
・返済 306,184円
・差し引き 393,816円
【デメリット】
借り入れが必要となるだけでなく借り入れのための連帯保証人が必要。おひとりさまの場合は相続人の兄か甥姪が候補となります。さらに、自宅に賃貸住宅が併設されているため、賃借人との関わりも必要になります。
2.半分売って売れたお金を建築費にして、建て替える…土地を残し、借り入れなしにする場合
【メリット】
土地半分を売却してそのお金を建築費に充てられるため、借入が不要となります。
27.5坪の売却代金の想定は坪150万円で売却したとすると売買代金は4,125万円となります。55坪の建物を建て半分の2戸を賃貸する場合、20万円程度の家賃が得られます。
【デメリット】
自宅の土地が半分になります。賃貸住宅が併用されているため、賃借人との関わりも必要になります。
3.売却して売れたお金で住み替える…土地は残せないが、借入のない住み替えができる
【メリット】
自宅土地を坪150万円で売却すると8,250万円を受け取れます。そのお金を原資として自宅と賃貸物件を購入することができます。老後を考えて自宅はワンフロア―、バリアフリーのマンションが候補となります。賃貸物件は中古の区分マンションのオーナーチェンジ物件だとすると4,000万円、利回り4%であれば毎月13万円の家賃が得られます。自宅と賃貸を分けることで煩わしさはありません。
【デメリット】
住み慣れた自宅がなくなってしまいます。
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
相続実務士®
株式会社夢相続 代表取締役
一般社団法人相続実務協会 代表理事
一般社団法人首都圏不動産共創協会 理事
一般社団法人不動産女性塾 理事
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書86冊累計81万部、TV・ラジオ出演358回、新聞・雑誌掲載1092回、セミナー登壇677回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2025年版 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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