ナースコールシステムは、患者と看護師をつなぐ医療現場の重要なインフラです。従来はシンプルな呼び出し機能にとどまっていましたが、昨今ではAI、スマートフォン、そして次世代通信技術の導入により、さらなる進化を遂げつつあります。一方で導入には、病院内の通信インフラの整備が不可欠です。本記事では、病院に導入されうる最新技術と、それを支えるための通信基盤の整備について、医療設備の専門家であり、日本医療福祉設備協会・理事の花田英輔氏が解説します。
本来のケアに専念できる通信基盤づくりと運用体制を
医療現場で進む技術革新のなかで、最も重要なのは「ツールがあくまで看護師の補助役に徹すること」です。AIを活用したナースコールの進化や、スマートフォンを用いたデータ連携は、看護師の業務を効率化し、患者と向き合う時間を増やすために設計されています。しかし、これらの技術に過度に依存することは、患者ケアの本質を見失うリスクを伴います。
特にナースコールシステムは、患者と看護師をつなぐ重要なインフラです。AIを導入することで、緊急度の高いコールを優先し、迅速な対応が可能となる一方、システムが適切に機能しなければ混乱を招く恐れもあります。こうした技術は、あくまで看護師の負担を軽減し、患者との直接的なコミュニケーションを支える補助的な役割にとどまるべきです。
また、医療従事者の人手不足は深刻な課題となっています。このような状況下で、デジタル技術は業務効率を高めるために欠かせない存在です。電子カルテ、遠隔診療、さらにはAIを組み合わせたナースコールシステムの進化によって、情報管理や診療ミスの減少が期待されています。しかし、患者に安心感を与えるのは「人」の存在です。ICTやDXの導入が進んでも、温かみのある人間同士のコミュニケーションが医療の根幹であることに変わりはありません。
技術はあくまで「支援的な役割」に徹し、看護師が患者ケアに集中できる環境を整えることが重要です。ナースコールの効率化や、タスクシフトの導入により、看護師の負担を軽減し、患者との対話やケアに注力する時間を確保できる体制が理想です。ツールに振り回されることなく、現場の声を反映した柔軟な技術の運用が鍵となります。
未来のナースコールは、人の温かさとテクノロジーの最適な融合により、よりよいケアを実現するための基盤となっていくことでしょう。
花田 英輔
国立大学法人佐賀大学 理工学部
教授(数理・情報部門)
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国立大学法人佐賀大学 理工学部 教授(数理・情報部門)
・学歴
昭和60年 九州大学工学部情報工学科卒業
昭和62年 九州大学大学院総合理工学研究科情報システム学専攻修士課程修了
平成13年 学位取得(博士(工学)、佐賀大学)「医用電子機器の電磁波障害防止に関する研究」
・職歴
昭和62年 日本電気株式会社入社(C&C情報研究所、平成元年から情報処理金融システム事業部)
平成 4年 長崎大学総合情報処理センター助手
平成 8年 九州大学医学部附属病院助手(医療情報部)
平成14年 島根医科大学医学部附属病院助教授(医療情報部)
(平成15年に大学統合により島根大学、平成19年より職名変更により准教授)
同病院 医療情報部副部長、地域医療連携センター副センター長を併任
同大学 医学部情報ネットワークセンター副センター長を併任
平成14年 メディア教育開発センター客員助教授併任(研究開発部、平成17年度まで)
平成19年 島根大学医学部附属病院個人情報保護教育責任者
平成20年 国士舘大学理工学部非常勤講師(健康医工学系、令和元年度まで)
平成23年 NPO法人しまね医療情報ネットワーク協会理事(平成26年度まで)
平成24年 島根大学医学部附属病院データセンター副センター長を併任
平成26年 佐賀大学大学院工学系研究科教授(知能情報システム学専攻)
平成29年「九州地区の医療機関における電波利用推進協議会」座長
平成30年 佐賀大学理工学部教授(知能情報システム学科、改組による)
平成31年 佐賀大学理工学部教授(情報部門、改組による)
令和 5年 佐賀大学理工学部教授(数理・情報部門、改組による)
・所属学会(いずれも正会員)
日本音響学会、情報処理学会、日本医療情報学会、日本生体医工学会、日本遠隔医療学会、日本医療福祉設備協会(理事)、ITヘルスケア学会、電子情報通信学会、日本医療機器学会
・研究会活動等
日本生体医工学会専門別研究会「医療・福祉における電磁環境研究会」会長(平成19年度~平成24年度、平成29年度~令和4年度)、同会幹事(平成17年度~)
電子情報通信学会「ヘルスケア・医療情報通信技術研究会」専門委員(平成18年度~)、専門委員会委員長(令和2年度~令和3年度)、顧問(令和4年度~)
日本医療福祉設備協会「学術委員会」委員(平成27年度~)
電波環境協議会「医療機関における電波利用推進委員会」副委員長(平成30年度~)
第17回日本医療情報学会春季学術大会プログラム委員長(平成25年6月20日~22日、富山)
第21回日本医療情報学会春季学術大会プログラム委員長(平成29年6月1日~3日、福井)
第51回日本医療福祉設備学会副学会長(令和4年10月27日~28日、東京)
第53回日本医療福祉設備学会学会長(令和6年11月29日~30日、東京)
2024年11月にはコトセラウェビナー(https://www.cotocellar.com/seminars/list)にて「ナースコールとスマートフォン連携」に関する講演を実施した。
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