一時「1ドル157円」に迫ったが…年末にかけて「米ドル高・円安」が大きく進む可能性は低いといえるワケ【国際金融アナリストが考察】

11月19日~11月25日の「FX投資戦略」ポイント

一時「1ドル157円」に迫ったが…年末にかけて「米ドル高・円安」が大きく進む可能性は低いといえるワケ【国際金融アナリストが考察】
(※画像はイメージです/PIXTA)

トランプ・ラリーの影響により、1ドル157円に迫った先週の「米ドル/円」。しかし、今後はこの時期特有の年末にかけての円売りポジションの調整が影響し、円高傾向に進む可能性がある、とマネックス証券・チーフFXコンサルタントの吉田恒氏はいいます。その根拠と、今後の米ドル/円の展開をみていきましょう。

今週の注目点=円売りポジション手仕舞いが鍵

米ドル買い・円売りポジションの損益確定の動きを考えるうえで注目されるのは、トランプ氏勝利を受けた米金利上昇・米ドル高がまだ続いているのかの見極めでしょう。米ドル高がまだ続いているなら、米ドル買い・円売りポジションは維持されるでしょうが、終わった可能性があるとみたら、少しでも米ドル/円が高いうちに利益確定を狙う動きが米ドル/円の上値を抑えることになるでしょう。

 

8年前の2016年、大統領選挙でのトランプ氏勝利を受けた米金利上昇・米ドル高の「トランプ・ラリー」は12月上旬にかけて約1ヵ月続きました(図表5参照)。

 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表5]米ドル/円と日米10年債利回り差(2016年~2020年) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

このときは開票が進むなかでトランプ氏が勝利しそうとなって初めて金利上昇・米ドル高などを見込んだ「トランプ・トレード」が本格化したので、それが約1ヵ月も続いたのではないでしょうか。
 

これに対して今回は、選挙中から「トランプ・トレード」は大きな話題となっていました。その意味ではすでに「トランプ・トレード」はかなり消化されており、正式な勝利確定後に拡大する余地は限られる可能性もあります。この見立て通りなら、「トランプ・トレード」の影響を受けた年内の米ドル高・円安はほぼ終わりの可能性すらあるため、米ドル買い・円売りポジションはさらに拡大するより、その手仕舞いによる米ドル安・円高への影響が注目されると考えられます。

 

代表的な投機筋であるヘッジファンドは、120日MA(移動平均線)が売買転換点の目安になっていると見られています。足下のそれは151.2円なので、米ドル/円が151.2円を割れそうになると、米ドル買い・円売りポジションの損益確定売りは加速する可能性も出てきます(図表6参照)。
 

出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
[図表6]米10年債利回りと120日MA(2022年1月~) 出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

 

以上を踏まえ、今週の米ドル/円の予想レンジを考えてみましょう。私はすでに年内の米ドル高・円安は終わった可能性もあると考えており、一方で152円を割れると米ドル買い・円売りポジションの手仕舞いが加速する可能性があるため、今週の予想レンジは151.5~156.5円で想定します。

 

 

吉田 恒

マネックス証券

チーフ・FXコンサルタント兼マネックス・ユニバーシティFX学長

 

※本連載に記載された情報に関しては万全を期していますが、内容を保証するものではありません。また、本連載の内容は筆者の個人的な見解を示したものであり、筆者が所属する機関、組織、グループ等の意見を反映したものではありません。本連載の情報を利用した結果による損害、損失についても、筆者ならびに本連載制作関係者は一切の責任を負いません。投資の判断はご自身の責任でお願いいたします。

 

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