(※写真はイメージです/PIXTA)

来年1月からスタートするトランプ大統領の新政権。最近の金融市場での話題のひとつとして、FRBが利下げを開始したにもかかわらず、米10年国債利回りをはじめ、米国の長期ゾーンの金利が上昇している点があります。この異例な事態が起こっている背景には何があるのでしょうか? フィデリティ・インスティテュート主席研究員でマクロストラテジストの重見吉徳氏が詳しく解説します。

米利下げ開始後の異例な3ヵ月-2年スティープニング

[図表4]は、最近の米国債のイールド・カーブをみたものです。【横軸】は残存年限、【縦軸】は利回り水準です。【灰色の点】が9月のFOMC政策決定の前日、【青色の点】が11月8日のイールド・カーブをそれぞれ表しています。

 

まず、【灰色の点】と【青色の点】のどちらとも残存3年程度のところまで(【横軸の0メモリから3メモリあたりまで】)をみると、「イールド・カーブが右下がり」になっていることがわかります(→【太い矢印】で補足)。

 

これは「債券市場が今後の利下げを織り込んでいるために、長めの金利ほど低くなっている」様子を示しています。

 

簡単に言えば、「1年物の米国債利回りは今後1年間の政策金利の平均値」、「3年物の米国債利回りは今後3年間の政策金利の平均値」と考えられます。たとえば、今から1年経ったあとも利下げが続くと考えれば、3年物国債のほうが1年物国債よりも低い利回りで取引されることが想像できます。

 

ところが、最近になって「イールド・カーブの右下がり」の「角度」が浅くなっていることがわかります。これは、利下げ見通しが急速に後退していることを示しています。

 

[図表4]米国国債のイールドカーブ(償還年限ごとの利回り)
[図表4]米国国債のイールドカーブ(償還年限ごとの利回り)

 

この短期ゾーンにフォーカスしてみましょう。

 

[図表5]は、1962年以降の全14回の利下げ局面における「米3ヵ月-2年金利差」(=2年国債利回りマイナス3ヵ月国債利回り)の変化をみたものです。利下げ開始の1営業日前を0として、それ以降の金利差の変化幅をとっています。

 

[図表5]1962年以降の利下げ開始後の米3ヵ月-2年金利差の変化幅(全14回)

 

すると、今回【赤線】は、全14回の利下げのうち、「米3ヵ月-2年金利差」は最も高まっており、短期ゾーンのイールド・カーブは「スティープ化」しています(→先ほどの表現を使うと、残存2年までの「イールド・カーブの右下がり」の「角度」が浅くなっているということです)。

 

11月8日時点の「米3ヵ月-2年金利差」の水準は「マイナス0.37%」であり、利下げの織り込みは残っているものの、利下げ開始前の水準「マイナス1.36%」からはほぼ1%スティープ化しており(=残存2年までの「イールド・カーブの右下がり」の「角度」が浅くなっており)、利下げ織り込みの解消が進んでいます。

 

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