米利下げ開始後の異例な3ヵ月-2年スティープニング
[図表4]は、最近の米国債のイールド・カーブをみたものです。【横軸】は残存年限、【縦軸】は利回り水準です。【灰色の点】が9月のFOMC政策決定の前日、【青色の点】が11月8日のイールド・カーブをそれぞれ表しています。
まず、【灰色の点】と【青色の点】のどちらとも残存3年程度のところまで(【横軸の0メモリから3メモリあたりまで】)をみると、「イールド・カーブが右下がり」になっていることがわかります(→【太い矢印】で補足)。
これは「債券市場が今後の利下げを織り込んでいるために、長めの金利ほど低くなっている」様子を示しています。
簡単に言えば、「1年物の米国債利回りは今後1年間の政策金利の平均値」、「3年物の米国債利回りは今後3年間の政策金利の平均値」と考えられます。たとえば、今から1年経ったあとも利下げが続くと考えれば、3年物国債のほうが1年物国債よりも低い利回りで取引されることが想像できます。
ところが、最近になって「イールド・カーブの右下がり」の「角度」が浅くなっていることがわかります。これは、利下げ見通しが急速に後退していることを示しています。
この短期ゾーンにフォーカスしてみましょう。
[図表5]は、1962年以降の全14回の利下げ局面における「米3ヵ月-2年金利差」(=2年国債利回りマイナス3ヵ月国債利回り)の変化をみたものです。利下げ開始の1営業日前を0として、それ以降の金利差の変化幅をとっています。
すると、今回【赤線】は、全14回の利下げのうち、「米3ヵ月-2年金利差」は最も高まっており、短期ゾーンのイールド・カーブは「スティープ化」しています(→先ほどの表現を使うと、残存2年までの「イールド・カーブの右下がり」の「角度」が浅くなっているということです)。
11月8日時点の「米3ヵ月-2年金利差」の水準は「マイナス0.37%」であり、利下げの織り込みは残っているものの、利下げ開始前の水準「マイナス1.36%」からはほぼ1%スティープ化しており(=残存2年までの「イールド・カーブの右下がり」の「角度」が浅くなっており)、利下げ織り込みの解消が進んでいます。