3階と10階では3階のほうが価値が目減りしない…その理由とは
一般的に、新築マンションは階が1階上がるたびに、価格も50万~100万円ほど上昇していく。例えば、3階の住戸が3,900万円なら、8階は4,300万円、10階は4,500万円で売りに出されることが多い。
しかし、マンションの住戸を10年後に売りに出した場合、新築のときよりも下の階と上の階の価格差は圧縮される。
例えば、10階に3,900万円の価格がつけられるとしたら、3階は3,600万円ぐらいが相場となる。新築のときは600万円も差があったのが、中古では300万円の差と、半分にまで縮まるのだ。
中古マンションで上の階と下の階の価格差が縮まるのは、中古マンション市場では通常、同時期にそのマンションの住戸が複数売りに出されることが稀だからである。新築時は何十戸もの住戸から好きな物件を選べるため、どうしても上の階が人気となる。
だが、中古市場で、そのマンションの住戸がひとつしか売りに出されていなければ、販売価格は同じマンションの直近の成約価格が基準となる。
つまり、半年前に10階の住戸が3,900万円で売れたとすれば、3階は下の階だから、そこから少しだけ値引いて3,600万円ぐらいの値付けとなるのだ。
買い手側としては、もっと安くしてほしくても、そのマンションではその住戸しか売りに出されていないので、ある程度、売り主の言い値で買うしかない。
タワマンにおいては新築・中古に関係なく「上層階」が強い
ここからわかることは、新築のマンションを買う際は、10階を買うよりも3階を買ったほうが資産価値は目減りせず、お得ということだ。
一方、中古マンションを買う際は、もし幸運にも上の階が売りに出されていたら、新築のときに上の階を買うよりもお得ということだ。新築時に、眺望のいい10階を買おうと思えば、3階の価格に600万円を上乗せしなければならなかったのが、中古では300万円上乗せするだけで手に入るのである。
とはいえ、中古マンションも3階のほうが10階より価格は低く、10階より価値が目減りしにくいことには変わりない。あくまで購入金額、その後の売却金額を重視するなら下位階が狙い目だろう。
また、中古市場では何階の住戸が売りに出されるかは、そのときのタイミング次第だ。
新築時のように、好きな住戸を選べるわけではない。そのため、上の階を狙い続けていると、成約まで時間がかかる可能性が高いことは意識しておいたほうがいい。
もっとも、ここまでの話は、タワーマンションのことではない。20階建て未満のマンションに限っての話である。
タワーマンションの最大の売りは何といっても眺望なので、新築だろうと中古だろうと、上の階でなければ購入する意味はほとんどないだろう。
榊 淳司(監修)
不動産ジャーナリスト
東京・首都圏 後悔しない住環境リサーチの会(著)