(※写真はイメージです/PIXTA)

東京23区内で建築ラッシュが続く「タワーマンション」。眺望のよさから「中高層階」の人気が高いものの、そこでの生活には意外なリスクが潜んでいます。そこで本稿では、不動産ジャーナリストである榊淳司氏が監修を務めた、東京・首都圏 後悔しない住環境リサーチの会による著書『東京23区 中古マンション 格差の地図帳』(宝島社)から一部抜粋し、タワマンの「エレベータリスク」ついて解説します。

超高層「タワーマンション」ならではのリスク

タワーマンションに法的な定義はないが、20階以上、高さが60メートルを超える超高層マンションのことを指すのが一般的だ。中高層階からの眺望が楽しめるタワーマンションの人気は高く、23区内では建築ラッシュが続いている。ただ、タワーマンションには買う前に忘れがちな意外なリスクもある。それは、エレベータリスクだ。

 

タワーマンションには必ずエレベータが複数台あるが、高層であり、住民も多いことから、ボタンを押してもなかなか来ず、来ても各階に止まるため、移動に時間がかかる。これをストレスに感じる人は多いだろう。とくに、1分1秒を争う朝の急いでいる時間帯などは、かなりイライラするはずだ。

 

エレベータがなかなか来ない、あるいは来ても移動が遅いというのは、まだ我慢することができるかもしれない。だが、致命的なのは大地震や浸水などが原因で停電となり、エレベータが停止してしまうことである。

 

タワーマンションの中高層階に住んでいても、現在の建築基準法では、15階建て以上のマンションには停電時も短時間は使用できる非常用エレベータの設置が義務づけられているので、避難自体はできる。また、震災後の水と食料の入手は、自分で備蓄しておくこともできるし、最近のタワーマンションには高層難民対策として途中階に防災備蓄倉庫を設ける物件も出てきている。

 

しかし、どうにもならないのがトイレの問題だ。大地震や浸水などで停電すると、水を上階へと引き上げるための給水ポンプも使えなくなり、トイレを流すこともできなくなってしまう。

非常用トイレの整備が進んでも災害時の問題を解決できないワケ

そうした災害時に備えて、近年は行政がマンホール直結の非常用トイレの整備や、トイレ用に使える井戸の確保に力を入れているが、それらをタワーマンションの中高層階に住んでいる人が使うには、エレベータが動いていることが前提となる。

 

もし停電でエレベータが止まっていたら、中高層階に住んでいる人は用を足したり、トイレを流す水を運んだりするために、1日に何度も十数階の階段を上り下りしなければならないのだ。

 

2019年には武蔵小杉のタワーマンションで、電気設備のある地下施設が浸水して全棟停電となり、電気も水道もエレベータも長期間使えなかったというトラブルもあった。住人のなかには、約2週間もの避難生活を余儀なくされた人もいたという。

 

災害などによって停電が発生すると、完全復旧までには通常約1週間はかかるとされている。タワーマンションは魅力的だが、中高層階に住むことを考えているなら、こうしたエレベータリスクがあることは覚えておきたい。

 

 

榊 淳司(監修)

不動産ジャーナリスト

 

東京・首都圏 後悔しない住環境リサーチの会(著)

 

 

東京23区 中古マンション 格差の地図帳

東京23区 中古マンション 格差の地図帳

榊 淳司(監修)東京・首都圏 後悔しない住環境リサーチの会(著)

宝島社

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