前回は、従業員を雇用する際に締結する「労働契約」について、その重要性をお伝えしました。今回も、労働条件にまつわる労務トラブルの予防について見ていきます。

「求人広告の内容=労働契約の内容」となるのか?

「求人出しても全然人が来なくて・・・」 このようなお話しを最近よく耳にします。

 

一時期の就職氷河期と相反して、今は売り手市場などと言われています。中小企業、特に小さな会社になればなるほど、人材採用についての悩みは尽きないものですね。

 

求人→面接→内定→採用という流れを踏み、少なくない採用コストをかけ、やっと入社してきた新入社員といきなり揉め事といったケースも増えてきています。こんなことはできれば避けたいものですね。そのうえ、即退職なんて話になりますと、また余計な労力がかかるうえ、再度振り出しから求人活動を始めることとなります。

 

ある労働者が今月から入社し働き始めました。この労働者から、「実際支払われた賃金が求人広告に書いてあった額より低い!」とか、「求人では期間の定めがない契約だったはずなのに、実際は1年契約なんて」といった訴えがされるケースがあります。労使の信頼関係に関わる問題です。これらに関しては、求人広告の内容がそのまま労働契約の内容になるのかといったところが焦点になります。

 

判例では、求人は応募の誘引に過ぎず、求人広告等の内容がそのまま、労働契約の内容になるとはいえない。と言う立場になる場合があります。しかし、求人内容が実態と相当異なる内容でもOK、と言うわけでもありません。おとり広告などは言うまでもありませんが、労使の信頼関係を失墜するような形を覚悟で人を採用したとしても、到底その労働者は長くは働いてくれないでしょう。

採用前に、実際の労働条件の説明をきちんと行う

人材採用のステップとしては、求人→面接→労働条件の明示→内定→労働契約の締結→採用→入社という流れになります。小さな会社になればなるほど、労働条件の明示→労働契約の締結と言うステップを飛ばしてしまっているケース、例えば、面接後即採用、「じゃあ、明日からよろしく」なんて事も結構あるのではないでしょうか。

 

求人に応募してくる労働者は、当然求人広告の内容を信頼及び期待するのが常であり、求人内容と異なる内容で採用するのであれば、双方の合意で労働条件を変更したと認められる必要があります。要は、採用前にはしっかり実際の労働条件の説明を行い、労働者も納得した上で雇用契約書を交わし、労働契約を締結するといった当たり前のプロセスを踏む必要があるんですね。このようなことがしっかり行われていなければ、求人通りの給与を支払って下さいね、と言われても反論できないかもしれません。

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