前回は、時間外労働を一定のルールの下で可能にする36協定について解説をしました。今回は、国が進める労働環境の改善策についてお伝えをします。

違反企業のハローワークでの新卒求人を受理せず

労働関係法令を取り巻く、トラブルが増加傾向にある昨今、国もその対策に本腰を入れています。今後、厚生労働省は、職場情報についての開示を強化する方針でいます。残業時間や育休の取得率、離職率など企業の職場環境に関する情報を集めたデータベースを整備し、求職者に企業の的確な情報を与えることで、いわゆる「ブラック企業」への就職を防ぐ目的です。故に当然、企業においても、労務管理は二の次というわけにはいかず、国の方針に沿った対応が求められています。

 

さて、国は平成28年3月から、一定の労働関係法令違反があった会社のハローワークにおける新卒求人は、一定期間受け付けないという仕組みを創設しました。もう少し詳しく説明すると、労働基準法や最低賃金法、男女雇用機会均等法や育児介護休業法といった労働関係法令の規定に違反し、是正勧告を受けたり、公表されたりした場合に、新卒者等であることを条件とした求人が不受理の対象となりました。ただでさえ採用難の時代に、ハローワークでの求人も不受理になれば、企業にとってはかなりの痛手となります。

「マタハラ」防止策を講じなかった企業にも罰則

また、これに加えて、厚生労働省は、不受理の対象に「マタハラ」に関する規定を加える方針です。妊婦への嫌がらせ等を意味するマタニティーハラスメント。このマタハラに対する法律で義務付けた防止措置を講じなかった企業の求人をハローワークで受理しないように制度を改め、平成29年1月から施行する予定でいます。

 

平成28年3月に育児・介護休業法及び男女雇用機会均等法が改正され、平成29年1月よりいよいよ施行となります。その中に、育児と仕事を両立させる環境整備を企業に促し、女性の社会進出を後押しする目的で「事業主に対するマタハラ防止措置の義務付け」というものが新設されました。具体的には、職場において、従業員の妊娠や出産、育児休業取得等を理由に職場で不利益な扱いをされることがないよう、事業主は防止措置を行いなさいというものです。防止措置の内容として、指針に示されているのは、以下となります。

 

(1)事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

(3)職場における育児休業等に関するハラスメントにかかる事後の迅速かつ適切な対応

(4)ハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための措置

(5)(1)から(4)までの措置と併せて講ずべき措置

 

上記のような指針に基づき、企業は措置義務を果たしていかなければなりません。

 

時代の流れとともに法は改正されていきます。現在、国は、育児や介護をしながら、労働者が継続して就業し続けられるような勤務環境の整備に力を入れていることが、法の内容からも読み取れます。企業の労務管理の在り方も時代とともに変化していく必要がありますね。

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