前回は、国が進める労働環境の改善策についてお伝えしました。今回は、社員の採用で「試用期間」を設けている場合に注意すべき点を見ていきます。

本採用の拒否は「解雇」にあたる可能性も

現在、多くの会社で「試用期間」の制度が使われています。「試用期間」とは、労働者の内定・採用後に、一定期間その方の能力や勤務状況等を会社が観察評価し、自社の従業員としての適格性を判断する期間とされています。判例によると、この試用期間は、解約権が留保された労働契約などと言われていますが、「試しに使用する期間」という文字に起因してか、意外と採用活動の延長上のテスト期間のように勘違いされている使用者も多いです。

 

試用期間中といえども労働契約は成立しています。いつでもどんな理由でもクビにできるとか、試用期間中は仮採用だから社会保険には加入させないなど、正しい理解がないままに運用されているケースが多くみられますので、注意が必要です。試用期間中の者に対しての解雇や解雇予告、社会保険や労働保険の加入等については以下でご確認ください。

 

まずは、試用期間後の本採用拒否は解雇にあたるか否かに関してですが、試用期間といえども、使用者と労働者の間で成立した労働契約を解消するわけですから、これは立派な解雇です。判例では、その性質上、通常の解雇より緩やかな範囲における解雇の自由が認められているとされていますが、そこはやはり解雇ですから、客観的な合理性及び社会通念上の相当性は必要になってきます。あまり簡単に考えない方がいいでしょう。

 

また、解雇に関しては、解雇予告手当の問題も生じてきます。通常、解雇の際は30日以上前に予告するか、もしくは解雇予告手当を支払うという決まりが労基法20条にあります。労基法21条には、試用期間中の者については、労基法20条を適用しないとありますが、ここで言う試用期間中の者とは、試用期間開始後14日以内の者に限定されていますので、14日を超えて引き続き使用されるに至った者については、解雇予告の制度は適用されます。

試用期間中でも社会保険の加入や有給休暇の付与が必要

次に、試用期間中の社員に対する、社会保険や労働保険の取扱いに関しても間違いが多いです。試用期間中の社員は、いわゆる臨時に使用される者とは異なり、永続性を考えて採用した社員です。故に、試用期間中であっても採用後速やかに社会保険や雇用保険の資格取得を行わなければいけませんので、入社と同時に手続を進めていくことになります。

 

有給休暇のカウントに関しても確認が必要です。有給休暇は、雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して与えることになっています。この雇入れの日から起算して6ヶ月間継続勤務とは、当然に試用期間も含めて6ヶ月間の継続勤務を意味します。試用期間中はこの6ヶ月に含めない、本採用の日からカウントするなどといった取り扱いは間違いですので、ご注意ください。

 

最後に、そもそも、試用期間は、法律で必ず設けなければならない制度ではなく、使用者が自由裁量で設ける制度です。試用期間の制度を設けたい場合には、就業規則等への制度整備が必要になります。

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