医療との連携強化で質の高いサービスを実現
医師や訪問看護師など、日々の介護施設運営で欠かせない人たちとも、家族のような付き合いを心掛けています。
かなりやには気管切開の入居者がいるので、訪問看護師には毎朝お世話になっています。なので、私たちはたいてい朝の4時半頃には出動して施設内の準備を進め、午前5~5時半ごろに来る訪問看護師を迎えます。
作業終了後、訪問看護師と話をじっくり詰める必要性がある時などは、看護師を相談室に「ちょっと待っていて」と5分~10分待ってもらい、冷凍ご飯を解凍しておにぎりを作って、お漬物をつけて「おなかがすいているでしょう。はい、一緒に食べよう」と一緒に食べながら打ち合わせします。
また、時には利用者が亡くなることもあります。そうした時に、対応や手続きのため待機している家族や訪問医、葬儀業者に軽い朝ごはんをお出しすることもあります。
最近では、施設を訪れてくれる人を、誰しもウェルカムで迎えたいという私たちの方針を理解してくれた職員は、私の不在時など特に指示をしなくても、訪問者に軽食を出すなどおもてなしをしてくれます。
どんな人でも、玄関払いをしないのが、かなりや流なのです。こうして日頃から関係性が築けているからこそ、医師や看護師からさまざまな情報を得ることができ、医師と緊密に連携が取れた、質の高いサービスの提供につながっています。
例えば、訪問医の診療のあと、帰り際にぼろっと「皮膚にこういう症状が出ている人は、大もとに糖尿病があるからな。ほかの糖尿病でもこういう症状が出やすい人がいたら気をつけろよ」などと、何げなく私たちに情報をくれることがあります。
それによって職員の医療的な知識が補完でき、職員全体のレベルが上がり、ひいては質の高いケアの実現につながります。
そういった情報は、「お茶の時間」の井戸端会議や、情報共有用のノートを通じて職員に共有されます。かなりやは事務所が一つしかないので、必ずみんな一日に一度は事務所に顔を出します。そこでみんなノートを見るので、自然と情報共有ができます。
例えば誰かが「これちょっと理解できないんだけれど、どういうこと?」と理解が追い付かない人がいれば、「こういうことなんだよ」とほかのスタッフが自然に解説してくれ、フォローしてくれます。そういうフォローの仕方を職員に教育してくれた母にも感謝しています。
職員もドクターの話から情報を得ようという姿勢を常に持ってくれ、それがわかっているからこそドクターは私たちに情報をくれます。そして、それをきちんと職員間で共有する仕組みがあるから、単なる情報が知識となり、他の利用者にも応用が可能になるのです。
介護という言葉は、もともと「介助」と「看護」という言葉の合成語ですが、実際は介護スタッフと看護スタッフの間では、しばしば意見の食い違いが見られることがこの業界の常だと思います。
それは、介護スタッフと看護スタッフでは、明確に役割が違い、できる仕事とできない仕事があるうえ、医療的な知識の差もあるからだと思います。こうした医師との連携を深めることは、介護職員の医療的知識を高め、本来的な意味での「介護」サービスが実現できるようになると考えています。
久野 佳子
デイ・サービス かなりや
代表取締役