高額な介護ロボットではなく赤ちゃんと同じ重さの人形!? 利用者からの声なき声やサインをくみ取るために大事なこと【介護施設経営者に聞く】

高額な介護ロボットではなく赤ちゃんと同じ重さの人形!? 利用者からの声なき声やサインをくみ取るために大事なこと【介護施設経営者に聞く】
(※写真はイメージです/PIXTA)

人は誰しも必ず老いますし、病気やけがで障害を負うこともあります。誰かの助けなしには、私たちは生きていくことができません。もし自分が介護される立場になった時、どんな介護をされたいか、何をされたら嫌なのかをじっくり考えてみることが重要です。本記事では、デイ・サービスかなりやの代表取締役である久野佳子氏の著書『職員・利用者・地域を結ぶ ひとつなぎの介護施設』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集して、利用者から好評の簡単・快適ケアについてご紹介します。

利用者からの声なき声やサインをくみ取る

障がい者や認知症患者は、必ずしも自分の意思を言葉ではっきり伝えられるわけではありません。こちら側が本人のつらさや痛みをくみ取って対応することで、穏やかに過ごしてもらうことができます。

 

私が経営するサ高住の入居者で、以前、夏場に冷房が効いた部屋にいると精神的に不安定になってしまうという人がいました。もともと精神的に障害のある人だったのですが、私も母もケア中に突き飛ばされてしまうようなことが何度もありました。

 

そこで、その部屋は冷房をつけるのではなく、部屋の四隅に凍らせたペットボトルを数本置いて涼しくすることにしました。すると、冷房よりも穏やかに涼しくなるので、落ち着いた表情で過ごしてもらえました。ペットボトルは業務用冷凍庫で凍らせておけばいいだけなので、予算もかからずに対応ができました。

 

ちなみに凍らせたペットボトルは、急に高熱が出てしまった人の対応にも役立ちます。発熱の対応はスピードが肝心なので、看護師が来る前に、凍らせたペットボトルを脇に挟んでもらったのですが、後で看護師から「初期対応が迅速で助かった」と言ってもらうことができました。

 

何げない工夫で利用者の体調を維持する試みはほかにもたくさんあります。お金がかからず、簡単にできて利用者に喜ばれることなので、ぜひまねしてもらいたいと思います。

 

例えば、夏場は汗をかきやすく、特に円背のひどい女の人は胸の下の肌がかぶれてしま人もいます。そういったことを防ぐために、キッチンペーパーを一枚折りたたんで、胸の下に挟んでもらうと汗を吸収してくれるので、肌の炎症を防ぐことができます。

 

余談ですが、夏場にキッチンペーパーは非常に重宝します。まひなどで手や足の指が硬直してしまっている人は、指の間に汗がたまりやすく炎症が起きてかゆみがでたり、ニオイがでたりしやすいのですが、そこに細く折ったキッチンペーパーを挟むことで汗を吸収してくれ、ニオイや肌の炎症を防いでくれます。

 

水虫の原因菌である白癬菌も、湿度70%以上、室温15℃以上になると活発に増殖するので、キッチンペーパーを指の間に巻き付け、低温やけどにならない程度にドライヤーでさっと乾かすと、ニオイを元から抑えることができます。

 

次ページ身近なものでできるさまざまな工夫を

※本連載は、久野佳子氏の著書『職員・利用者・地域を結ぶ ひとつなぎの介護施設』(幻冬舎メディアコンサルティング)より一部を抜粋・再編集したものです。

職員・利用者・地域を結ぶ ひとつなぎの介護施設

職員・利用者・地域を結ぶ ひとつなぎの介護施設

久野 佳子

幻冬舎メディアコンサルティング

人と人、心と心をつなぐ、介護施設の新しいかたち 利用者・職員・地域から愛される介護施設に学ぶ、絆を大切にする運営とは? 超高齢社会を迎える日本において、介護の重要性はますます高まっています。しかし、介護業界…

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