利用者からの声なき声やサインをくみ取る
障がい者や認知症患者は、必ずしも自分の意思を言葉ではっきり伝えられるわけではありません。こちら側が本人のつらさや痛みをくみ取って対応することで、穏やかに過ごしてもらうことができます。
私が経営するサ高住の入居者で、以前、夏場に冷房が効いた部屋にいると精神的に不安定になってしまうという人がいました。もともと精神的に障害のある人だったのですが、私も母もケア中に突き飛ばされてしまうようなことが何度もありました。
そこで、その部屋は冷房をつけるのではなく、部屋の四隅に凍らせたペットボトルを数本置いて涼しくすることにしました。すると、冷房よりも穏やかに涼しくなるので、落ち着いた表情で過ごしてもらえました。ペットボトルは業務用冷凍庫で凍らせておけばいいだけなので、予算もかからずに対応ができました。
ちなみに凍らせたペットボトルは、急に高熱が出てしまった人の対応にも役立ちます。発熱の対応はスピードが肝心なので、看護師が来る前に、凍らせたペットボトルを脇に挟んでもらったのですが、後で看護師から「初期対応が迅速で助かった」と言ってもらうことができました。
何げない工夫で利用者の体調を維持する試みはほかにもたくさんあります。お金がかからず、簡単にできて利用者に喜ばれることなので、ぜひまねしてもらいたいと思います。
例えば、夏場は汗をかきやすく、特に円背のひどい女の人は胸の下の肌がかぶれてしま人もいます。そういったことを防ぐために、キッチンペーパーを一枚折りたたんで、胸の下に挟んでもらうと汗を吸収してくれるので、肌の炎症を防ぐことができます。
余談ですが、夏場にキッチンペーパーは非常に重宝します。まひなどで手や足の指が硬直してしまっている人は、指の間に汗がたまりやすく炎症が起きてかゆみがでたり、ニオイがでたりしやすいのですが、そこに細く折ったキッチンペーパーを挟むことで汗を吸収してくれ、ニオイや肌の炎症を防いでくれます。
水虫の原因菌である白癬菌も、湿度70%以上、室温15℃以上になると活発に増殖するので、キッチンペーパーを指の間に巻き付け、低温やけどにならない程度にドライヤーでさっと乾かすと、ニオイを元から抑えることができます。