(※写真はイメージです/PIXTA)

2024年4月から不動産の相続登記が義務化されました。相続登記をするべき理由は、「義務化されたから」「ペナルティができたから」だけではありません。放置することで直面するリスクやデメリットは、義務化される前から存在しています。本記事では、事例とともに、相続登記を放置することによるリスクについて司法書士の近藤崇氏が解説します。

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妻の死後、自宅やアパートを売却することになり…

さて問題が顕在化したのは妻の死亡後です。妻の死亡後、相続税納税などもあることから、妻の相続人である兄弟姉妹や甥姪たち(図表②~④)はこれら自宅やアパートを売却することにしました。しかし登記名義は亡き夫のままです。ここで慌てて司法書士のもとへ相談に訪れました。

 

夫の死後、夫の残りの兄弟の4名(A~D)のうち、AとDの2名が相次いで亡くなっていました。相続は、その後何年経過しようが、その人の「死亡日」時点まで遡って考えます。このため仮にBとDが死亡していても、それぞれの子に相続の権利が引き継がれるだけです。外形的には一見Bさんの財産だったと思われる土地建物を売却しようにも、そもそもの不動産登記の名義が変わっていませんので、もう一度、夫の死亡時の相続から始めなければなりません。

 

夫の死亡時、法定相続分としては当時存命だったA~Dの兄弟姉妹「全員」で4分の1。妻が4分の3の相続分です。しかしすでにAとDは死亡しているため、各々の子ら全員にまた遺産分割協議書に実印を貰わなければ亡き妻名義に登記することすらできません。また、運の悪いことにBが重度の認知症を発症しており、成年後見人として別の司法書士が選任されていました。

 

Bの成年後見人である司法書士としては、わずかな相続分(4分の1に兄弟の頭数の4分の1を掛けた16分の1)であっても、これを放棄することが立場上できません(成年後見人を監督する家庭裁判所の許可が得られないためです)。このためB(とその成年後見人)は、少なくとも法定相続分については、否が応でも立場上、相続をせざるを得ない状況になります。

 

「Bが相続するならば」と存命のC、および亡きAやDの子ら全員も、「どうせならわずかでも相続分が欲しい」となるのが人情です。

 

こうして1億程の不動産を売却するために、亡き夫の相続人8名、そして妻の相続人4名の合計12名で、2回にわたる遺産分割協議を行うことになってしまいました。登記や遺産分割の詳細は割愛しますが、その手間やコストなどは、一般に法律や相続登記になじみのない方でも、想像が容易いのではないでしょうか。

 

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本記事は『アパート経営オンライン』内記事を一部抜粋、再編集したものです。

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