増え続ける「おひとり様」高齢者たち
超高齢社会へと突入した日本だが、その一方で、高齢者の単身世帯の増加が著しいのをご存じだろうか。2023年の高齢者世帯(1人以上、65歳以上の高齢者がいる世帯)は1,656.0万世帯だが、そのうち単身の高齢者世帯はなんと855.3万世帯もある(厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』)。
ちなみに、女性の単独世帯は551.1万世帯と、男性の単独世帯304.2万世帯を大きく上回っているが、これは平均寿命の差だといえる。2023年の平均寿命は男性81.09年、女性87.14年。また、男性が年上の夫婦が多いことから、ひとり暮らしの高齢女性が増えているのだ。
離れて暮らす子どもたちは親の心配をしつつも、親のほうもまた、多忙な子どもたちに心配をかけまいとして、ひとりで最後まで頑張るケースは少なくない。
足立区在住の会社員・鈴木さん(仮名・40代)の父親も、そのひとりだった。
鈴木さんは、3つ違いの同じく40代の弟と2人きょうだい。実家は横浜市郊外のベッドタウンにあり、鈴木さんと弟が就職や結婚で家を離れてからはずっと、両親が2人で暮らしていた。
「私と弟が独立したのは20年以上前です。うちは母親のほうが先に亡くなり、父は10年近くひとり暮らしをしていました」
共働きだったという鈴木さんの両親。父親はもともと家事育児に協力的で、掃除・洗濯・料理はひと通りこなせるうえ、生来の几帳面な性格もあり、独居でも生活面の心配はなかったという。
「私の父は、描いたような勤勉なサラリーマンで、軽口を叩くところなど見たことがありません。しかし、大変気づかいのある人で、母が大変そうだと、すぐ気づいてサッと手を差し伸べたり、私たち子どもが問題を抱えると、言葉少なに的確なアドバイスをくれるなど、本当に頼りになる父親でした」