ユニクロに1年間にわたって潜入取材!「時給1000円」のアルバイトとして入り込んだジャーナリストが思わず書き留めた、先輩社員の〈衝撃の一言〉とは?

ユニクロに1年間にわたって潜入取材!「時給1000円」のアルバイトとして入り込んだジャーナリストが思わず書き留めた、先輩社員の〈衝撃の一言〉とは?
(※写真はイメージです/PIXTA)

ユニクロの店舗に時給1000円のアルバイトとして1年間潜入取材して溜まったメモは30冊以上。記録を書き残す以外に重要なメモの役割とは? ユニクロ、アマゾン、ヤマト運輸、佐川急便からトランプ信者の団体まで名だたる大企業・団体に潜入してきたジャーナリストの横田増生氏による著書『潜入取材、全手法』(角川新書)から一部を抜粋・再編集して、お届けします。

天候や匂い、BGMも書き留める

ユニクロの店舗では、バックルームでの〝袋むき〟作業から始めた。これは、店舗に送られてきた商品を、店頭に並べることができるように段ボールから出して、ビニール袋を剝く作業のこと。その作業中に私がメモしたのは、段ボールに印刷された中国の生産工場の名前だった。

 

いくつかの名前を書き写しているうちに、〈クリスタル アパレル〉という名前にピンときた。私が『ユニクロ帝国の光と影』を書くために、中国の広東省で取材したユニクロの下請け工場の〈晶苑集団〉のことだったのだ。

 

取材当時、その工場で経営幹部にインタビューした翌日、私は労働者の話も直接聞きたいと工場近くの市場で買い物をしていた女性に声をかけた。夫婦ともに〈晶苑集団〉で働いているという。夫婦と8歳になる一人娘が暮らしているアパートまで付いて行き、話を聞いた。

 

日本の間取りでいうと八畳一間のアパートには、台所とトイレ、それに親子3人が一緒に眠るベッドがあった。彼らは中国で〝農民工〟と呼ばれる出稼ぎ労働者であり、経済発展の下支えの役割を負うが、その生活はつましい。女性に将来の夢を尋ねた。

 

「体がつづく限り、夫婦二人で出稼ぎをつづけようと思っています。娘がちゃんとした教育を受け、上の学校まで行って、私たちのような出稼ぎではなく、事務所で働く人になってほしい。少なくとも娘の学校教育が終わるまでは、出稼ぎをやめるわけにはいきません」

 

その時のことを思い出しながら、今でも二人は同じ工場で働いているのだろうか、と考えた。もっといい条件の工場を見つけて働き場所を変えたのだろうか。

 

取材のとき、髪を後ろで二つに結んでいた女の子は、日本でいうなら中学二年生になっているはず。終始、興味深げにその様子を見守っていた少女は、両親の期待に応えようと勉強に励んでいるのだろうか、と店舗のバックルームで物思いに浸った。

 

段ボールについて来る送り状には、配送を担当する物流業者の名前が書いてあった。〈三菱商事ロジスティクス〉や〈ハマキョウレックス〉、〈ダイセーロジスティクス〉や〈SBSロジコム〉などの社名が書いてある。これもメモに書き取る。

 

私は物流業界の専門紙の出身なので、だれがどこからモノを運んできたかという物流の情報に人並み以上に興味がある。加えて、『ユニクロ帝国の光と影』にも同社の物流網について企業名を挙げて書いており、それ以降に起こったと思われる委託先の変化は新情報だった。

 

ユニクロは頑ななまで秘密主義の会社であるため、多くの企業が公開している取引先の物流企業の名前を公表していない。よって、ユニクロのサプライチェーン(供給連鎖)に関する情報にはニュースバリューがある。

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※本連載は、横田増生氏による著書『潜入取材、全手法』(KADOKAWA)より一部を抜粋・再編集したものです。

潜入取材、全手法

潜入取材、全手法

横田 増生

KADOKAWA

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