超高齢化が進む日本。子どもは高齢の親の介護に手を尽くしたことで、時間や仕事を失うばかりか、人生設計まで大きく狂うといった、つらい状況に陥ってしまうことがあります。不動産と相続を専門に取り扱う、山村暢彦弁護士が解説します。
サポートのそぶりも見せない姉と弟、仕事まで失い…
しかしその後、近藤さんの姉や弟が、母親のサポートに出向くことも、金銭的な援助をすることも一切ありませんでした。
さらに大変なことに、近藤さんの勤務先が業績不振に陥り、不採算部門を整理することになりました。近藤さんもそのあおりを受け、失職してしまったのです。
「勤務先は10時6時で残業もなく、有休もとりやすくて感謝していたのですが…。姉にそのことを話し、〈就職活動しなければいけないから、落ち着くまで少し手伝ってほしい〉といったところ、〈夫の世話があるから無理〉とバッサリ…」
近藤さんはなんとかパート従業員の職を見つけ、勤務しつつ介護していましたが、なし崩し的に介護の比重が増えていき、いつしか介護だけの生活へと突入してしまいました。
「母の介護をした分、遺産を手厚くしてほしい」「はぁ!?」
母親が亡くなったのは、近藤さんが完全な介護生活へシフトしてから2年後のことでした。
「脳梗塞でした。どうやら、私が出かけてすぐ倒れたらしく、銀行やらスーパーやらで用事をすませて戻ったときには意識がなく…。搬送先の病院で、数日後に亡くなりました」
母親が亡くなったことで、相続が発生。近藤さんは、郊外の老朽化した自宅を売却し、母親の介護をしたぶん手厚く遺産をもらい、あとは姉と弟で2分割すればいいと考え、それを姉と弟に提案しました。
ところが、姉と弟はその話を聞いて激怒。その理由は以下のようなものでした。
●母親のお金で生きていたのだから、本来なら贈与を受けたのと同じでは。相続額が大きくなるのはおかしい。
●介護したかもしれないが、その分は生活費と相殺では。譲歩しても遺産分割は3等分が妥当。
●お金の不安があるのならきょうだいに相談すべきなのに、それがなかった。「介護のせいで離職した」というのは甘え。母に寄生していたも同じ。
●母親は遺族年金をもらっている。それなのに、預貯金が減っているのはおかしい。使い込みでは。
「母の介護という制約がなければ、再就職はできたと思っています。そもそも、親の家で、親を介護しながら暮らすことが生前贈与になるのでしょうか?」
「母のお金は断じて使い込みしていません。母の遺族年金は14万円で、生活するだけでギリギリです。貯金は病院代やタクシー代、エアコンや給湯器の買い替え、日常の生活のこまごました出費で預貯金が目減りしました。いずれにしろ、母の頼みで支払いを決めたものばかりです」
そういうと近藤さんは、ボロボロとこぼれる悔し涙をぬぐいました。
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弁護士法人 山村法律事務所
代表弁護士
実家の不動産・相続トラブルをきっかけに弁護士を志し、現在も不動産法務に注力する。日々業務に励む中で「法律トラブルは、悪くなっても気づかない」という想いが強くなり、昨今では、FMラジオ出演、セミナー講師等にも力を入れ、不動産・相続トラブルを減らすため、情報発信も積極的に行っている。
数年前より「不動産に強い」との評判から、「不動産相続」業務が急増している。税理士・司法書士等の他士業や不動産会社から、複雑な相続業務の依頼が多い。遺産分割調停・審判に加え、遺言書無効確認訴訟、遺産確認の訴え、財産使い込みの不当利得返還請求訴訟など、相続関連の特殊訴訟の対応件数も豊富。
相続開始直後や、事前の相続対策の相談も増えており、「できる限り揉めずに、早期に解決する」ことを信条とする。また、相続税に強い税理士、民事信託に強い司法書士、裁判所鑑定をこなす不動産鑑定士等の専門家とも連携し、弁護士の枠内だけにとどまらない解決策、予防策を提案できる。
クライアントからは「相談しやすい」「いい意味で、弁護士らしくない」とのコメントが多い。不動産・相続関連のトラブルについて、解決策を自分ごとのように提案できることが何よりの喜び。
現在は、弁護士法人化し、所属弁護士数が3名となり、事務所総数7名体制。不動産・建設・相続・事業承継と分野ごとに専門担当弁護士を育成し、より不動産・相続関連分野の特化型事務所へ。2020年4月の独立開業後、1年で法人化、2年で弁護士数3名へと、その成長速度から、関連士業へと向けた士業事務所経営セミナーなどの対応経験もあり。
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神奈川県弁護士会 所属
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著者登壇セミナー:https://kamehameha.jp/speakerslist?speakersid=1098
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